破急風光帖

 

★  日日行行(469)

2021.07.13

* 今日は読書ではなく、映画でした。といっても、新作の映画ではなく、なんと1959年ヴェネツィア国際映画祭で公開された映画「真夏の夜のジャズ」(バート・スタイン監督)。じつは、この歴史的作品を4k修復版にして、さらにそれを、オノ セイゲンさんがマスタリングしたもの。Blu-rayで8月4日発売ということですが、それゆえただ1度の試写会に、セイゲンさんからお誘いを受けたのです。

 セロニアス・モンクにルイ・アームストロング・・・わたしが愛したジャズメンたちの一世代前のレジェンドたちが演奏する1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルの映像ですが、感動しました。もちろん、セイゲンさんの手が入った音響も素晴らしいのですが、そして登場するミュージシャンたちも圧倒的なのですが、おもしろいのは、監督がとても執拗に、観客の表情を撮っていることでした。昼間から夜へ、その間にどんどん顔が変わっていく。さすが写真家であったバート・スタイイン、これは写真のジャズへの挑戦だったんだ、と理解したのですが、最後、まさにミッドナイト、その「写真」の眼が、ジャズの祈りに圧倒されて終るのです。ああ、ジャズは、合衆国におけるヨーロッパ系とアフリカ系の二つの文化が混ざりあい、溶け合う祝祭の場だったんだ、とその意味にあらためて、とても感動しました。(しかもですよ、そのまんなか、昼から夜の境目に、半裸で煙草をふかしながら、ひとりでバッハの無伴奏を演奏するチェリストのシーンが挿入されるんです!冒頭の海のヨットの光景もそうですが、「物語」ではなく、「写真的シーン」をジャズ的に演奏していくこの映画手法に唸りました。
 (じつは、明日、オノ セイゲンさんにお会いして小さな対話をすることになっているんです。いろいろきいてみることにしようっと。)


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