破急風光帖

 

★  日日行行(461)

2021.06.23

* 今朝、立花隆さんの訃報。80歳。
  たった一度だけ、立花さんと「立ち会い」をしたなあ、と思い出し、さて、その記録があったはずと探すと、東京大学出版会の雑誌「UP」2010年4月号。これは、わたしの『知のオデュッセイア』の刊行記念イベントとして、2009年11月に神保町の東京堂書店のホールで行われたイベントの記録、「オデュッセイア後日談、あるいは「遺伝子」との三番勝負」というタイトルになっています。

 この「三番勝負」、じつは、わたしの「仕掛け」がことごとくかわされて、わたしが茫然と立ちすくむという「完敗!」。なんだか「かすりもしなかった」感じがおもしろい。なにしろ、すでに膀胱ガンで治療を受けていらした立花さんが、その少し前にやはりガンで亡くなったジャーナリストの筑紫哲也が病床でつけていらした「残日録」というノートを公開してくれたりもしたので、その記録へのこだわりを取り上げて、「筑紫さんの記録へのこの執念を立花さんはどう見るか?」と訊いてみると、
 立花 やっぱり筑紫さんの性格でしょうね。
 小林 性格・・・(?)最後はやっぱり遺伝子ですか?
 立花 いやいや、ぼくはここまでやるつもりはないです。
 小林 ないんですか?じゃ、どのくらいのものをお残しになるつもりですか?
 立花 えっーと、いまはまだものを書いていますし、ばくはまだ再発してませんから、一応、五年生存率80〜90%の段階ですから一般の人よりはぼくはたぶん長生きするんじゃないですか?
 ときて会場は爆笑につつまれました。
 わたしは、思わず「ここまで楽天的なガン患者もめずらしい」とほとんどあきれる。

 そんな明るい、楽しい対話をしたなあ、と思い出しました。立花さん、ご冥福を祈ります。
 「いやいや、わかんないほうがおもしろいでしょ。皆、そうでしょ?」ーーーこの「おもしろいでしょ?」に立花さんのすべてのエッセンスを見た思いがしました。きっと、あちら側でも、おもしろがっているにちがいありません。


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