破急風光帖

 

★  日日行行(446)

2021.05.16

* 前回に続いて、またしても「なにやら遠い昔の感覚」でした。

 木曜の文楽に続いて、今度は音楽。昨日は、東京芸術劇場の東京ニューシティ管弦楽団のコンサートに行きました。今度は、青学の元教え子の方々に誘われて・・・(教師冥利に尽きますねえ!)。プログラムは、「イタリア」!ということで、レスピーギ「鳥」、マルトゥッチ「交響曲第2番」、1927年と1904年の作品ですから、20世紀前半のイタリアの音楽ということになります。わたしがまったく知らない世界だったのですが、とても古典的な響きでした。とても空間的というか。
 だが、わたしにとっての昨日の「目玉」は、その二曲のあいだに演奏されたカスティリオーニの「クォドリベット」です。1976年の作品、本邦初演!しかも、ピアノと小オーケストラのためのこの曲、ピアノを弾くのが、高橋悠治さん!!
 悠治さんが、昔とかわらない足取りで、そそっと登場してピアノに向かい、鍵盤に手をポンとおろしたときから、なんだか、わたしは胸がいっぱい、眼がうるみます。(文楽もそうでしたが)、ああ、わたしの70年代、どれほどこうした現代音楽の立ちのぼる響きを聴きに行っていたか!日独現代音楽祭、Music Today,ムジカ・プラクティカ・・・あの「現代音楽」の空間!わたしは音楽は苦手なので、なにもわかるわけではないのですが、ずいぶん通っていた。そこに「いま」があることを感じていた。ああ、なつかしい!・・・そんな感じですかね。ひとつの「地平」が開かれた感覚・・
あの「世界という風」・・・それは、わたしにとっての「身体と空間」の感覚の学びであったのだなあ、と。
 パンフレットには、この曲について、「小川がせせらぎ風が森を渡る、南アルプスの風景」と書いてありましたが、わたしには、響きがたがいに呼応しあいひとつの鮮やかな空間が立ちのぼる70年代わたしの「学び」の風景だったかなあ・・・ささやかな、しかし幸福!
 
 


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