破急風光帖

 

★  日日行行(428)

2021.02.28

* 今月の24日フランスの詩人フィリップ・ジャコテが亡くなりました。95歳でした。翌25日に訃報が届きました。2017年11月13日に、わたしは、桑田光平さんとともに、フランスのグリニャンのお宅にお邪魔してお話しをうかがいました。(2018年発行のわたしの個人編集雑誌『午前4時のブルー』第1号、水声社)に、桑田さんの訪問記のテクストが掲載されています)。

 昨日の仕事が一段落して、今日、そのときいただいたガリマール社Poésie版『L'encre serait l'ombre」(「インクの影の向こうの光」とでも誤訳してしまおうかな?)を書棚から取り出してぱらぱらと読みました。冒頭頁に、ジャコテさんの自筆で「われわれの美しい出会いの思い出に」という献辞が書かれていて、(忘れていたので)不意をつかれたみたいで、ぼっとしてしまいました。500頁以上の部厚い本なのですが、頁をくって、眼がとまったのが、la loggia videという散文。年末年始の挨拶として、(わたしも二度も行ったことのある)スクロヴェーニのあのジョットの壁画のなかの「からっぽのloggia」の絵葉書を送ってくれた若い女性A.C. が突然に、グリニャンの近くで交通事故で亡くなってしまうというかなしい出来事について書かれたテクスト。ジョットの絵葉書がかれにとっては、ある意味で、その突然の死の信号であったかのように、わたしもまた、こちらはまったく事後的なのだけど、この短いテクストが、かれの死をわたしに「告げる」信号であると思うことにします。わずか5頁のそのテクストを繰り返し読んでいます。

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