★ 日日行行(360)
2020.06.03
* 今日になってはじめて週刊『読書人』5月8日号を手にしました。「#こういうときこそ本を読もう」という特集で36人の人がこんなときだから読む「とっておきの本」を挙げています。わたしもそのひとり。字数が400字というので、ほとんど瞬間的な反応で1冊だけ選びましたが・・・
(もういいでしょうから)原稿を披露しますねーーー「文学でなければならない、と思う。人類の危機、人間の黄昏、これまで蓄積された経験が役に立たない事態。このときに、それでも一個の「人間」として「世界」に向かい合う想像力。だから、「文学」だとしても、現実を忘却し、そこから逃避することを促すものではなく、この「希望のない」現実に送り返すもの。となって、わたしが手にとった一冊は、マルグリット・デュラス『夏の雨』(田中倫郎訳、河出書房新社、1990年)。なかで十二歳のエルネストと一歳年下の妹ジャンヌが対話している、「神が存在していないということは人にはわからないわね」、「うん。そう言っているだけで、わかっていない。どの程度まで存在していないか、となると君だってわからないだろう?」と。忘れてはいけない、これは、数ヶ月に及ぶ昏睡状態を含む重篤な入院生活から復帰した直後の七五歳のデュラスが書いたもの。彼女が書いている、その場面を通して、すべての言葉が読まれなければならない。」