破急風光帖

 

★  日日行行(333)

2020.04.23

* 「時間が人間たちを老けさせるというだけではなく、むしろ人間たちが時間——まだない、もはやない——のなかにそれを置くことによって、あらゆる出来事を老けさせるのだ」。リオタールの言葉です。リオタールとの「遭遇」のドキュメントをまとめていると言いましたが、今日、忘れていたテクストを思い出しました。

 1993年に雑誌『太陽』が創刊30周年記念で「人間の現在」という特集を作ったのですが、そこで「世界の知性11人」に特別寄稿を依頼した中に、リオタールも入っていた。そしてわたしがその原稿を翻訳したのです。忘れてましたが、その主題が「老い」でした。そのときリオタール先生は69歳くらい、わたしは43歳。今日、それをひさしぶりに読み返したら、なんだか先生から、いま70歳のわたしに届けられた「通信」のような気がしてきました。
 このテクスト、先生の父親のことにも触れています。とても不思議な、すてきなテクストです。なるほど、これが先生の哲学のある種の「悟り」でもあるよなあ、と思ったりしました。フィロソフィアって、こういうことだよなあ、と共感する。
 で、どこかに原文があるはずだ、と思って探すのだけど見つからない。きっといつか出てくるとは思いますが、あまりにも過去のドキュメントが混乱しているので。でも、このテクスト、フランス人は知らないのではないかなあ?リオタールのどんな本にも収録されていないだろうなあ。と。「まだ、ない」、「もはやない」のあいだに、「いま、もはやない、がある」と、わたし、先生に言い返そうかなあ・・・わかります?今日はわたしにとって幸福な1日でした。


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