★ 日日行行(316)
* うららかな春の日、少し霞みかかっているような淡い青空、遠くの丘には、櫻の花の群が見え、しかしすぐ下の並木の欅もすでに芽吹いて新緑、ああ、春!と嘆息。なにしろ、まったく目に見えない〈無限小〉のものに世界中の人びとが怖れおののいている・・・未曾有の時代転換。
人類全体にとってのカオス的大転換のさなかにあっては、わたし個人の「新しい季節」などまったく無意味ですが、なににもまして「いま」を生きなければならないことがはっきりしているのは確かでしょう。でも、この「いま」はけっして無限定の「いま」ではなく、あくまでも、わたしという一個の人間が70年間生きてきた、そしてこれからもあと少しは生きていく(だろう)その「途」における「いま」、その意味でたったひとつの「いま」ですね。にもかかわらず、不思議なことに、この「わたしのいま」は、かならずしも「わたしのもの」ではない。それは、閉じていなくて、開かれています、いや、開かれていなければなりません。こういうときだからこそ、いつもよりさらに広く開かれていなくてはなりません。他人とコミュニケーションをとるという意味ではなくて、隔離され孤立し、しかし意識として、開かれているということかな。
本が届きます。今週は、わたしのところにたくさん新刊の本が送られてきました。ありがたいことです。すぐに全部を読むことはできないのですが・・・タイトルだけでも掲げさせてください。
1)武蔵野美術大学の森山明子さんが送ってくださったのが、森山明子『遠藤明子《鐘》のすべて』(美学出版合同会社)。絵画一作品に一冊の全部を捧げるという趣向。すごい。
2)青学の同僚でもあった伊藤毅さんからは、オランダ低地地方のフリースラントの都市郡の研究調査をまとめた本『フリースラント』(中央公論美術出版)。詳細な共同研究の成果。
3)駒場の大石和欣さんからは、こちらも共同研究の成果ですが、『コウルリッジのロマン主義』(東京大学出版会)、なんと500頁、9800円の大著!
4)相模女子大の坂本佳子さんからは、彼女が訳した、マルグリット・デュラス/フランソワ・ミッテランの対談集『パリ6区デュパン街の郵便局』(未来社)。
そして最後、昨日届いたのが、
5)映画監督の吉田喜重監督の20年かけて書いた長編小説『贖罪』(文藝春秋)。どういうものだと思います?副題がなんと「ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争」!!驚きです。衝撃的!この週末、外出自粛して、読みはじめなければ・・・・
わたしのほうも、4月1日に「オペラ戦後文化論Ⅱ」の校正ゲラを未来社に戻しました。来月にでも刊行できると嬉しいですが・・・そして、次は、なんとか、わたしの「いま」をつくったわたしとフランスの現代哲学との「遭遇」の記録をまとめた本をつくりたいなあ、と思っています。2年前から遅々たる歩みですすめてきた仕事、ここで一気にまとめて、その次のステップへと踏み出したいと思っています。