★ 日日行行(301)
2020.03.06
* 「だが、どんな場合でもそうだが、隠されたものは、かならず致命的な仕方で回帰してくる」/「人間の生の意味は、なによりもわれわれの無意識の奥にある根源的な〈死〉の衝動との不断の戦いにあり、そしてほんとうの〈愛〉の経験こそが人間をそうした深奥にある〈死〉の領域に連れ出すのだ」。
と書いているのは、わたし自身。でも20年以上前。98年10月11日の日本経済新聞の書評でした。問題となっているのは、パスカル・ローズ『ゼロ戦・パリ・幻の愛』の邦訳。96年度のゴンクール賞作品なのですが、わたし、この本を書評したことを、まるで思い出せませんでした。
青山学院の研究室の片付けをしていて、さまざまな書類などを整理していて見つけた新聞でしたが、きっとこの本、さらっと読んでさらっと書いたのですね、わたしは。だいたい記憶力が乏しい人間なので、こうなるのですが、じつはたくさんあります。インタビュー記事とか、軽いエッセイとか、依頼に応じて瞬間的に反応しているので、こういうことになります。まさに行き当たりばったりの人生ですね。これに老齢にともなう物忘れがもうはじまっていますので、さあ、どういうことになりますか。