破急風光帖

 

★  日日行行(293)

2020.02.23

* 帰国間近ということになると、いつもは、本屋に行って、手当たり次第、新刊などを十数冊は買って帰るのですが、今回は、帰国後すぐに青山学院の研究室をカラにするために本を処分するという大仕事が待っているせいか、ここで本を買おうという気持ちがなかなか湧いてきません。しかも、残った人生で、いったあと何冊読めるのかなあ、とつい考えるような歳になりましたから。

 大学でフランス語、フランス文学フランス哲学を教えている以上、フランスで出る本にはある程度、興味をもち、知っていることが、最低限の義務だとわたしは思ってきましたので、パリの本屋をめぐることは「仕事の一部」だったわけだけど、この仕事からも解放されるのかもしれませんね。
 もちろん、そうは言っても、パスカル・キニャールの新刊とか、古本屋で見つけたマーク・ロスコのノート、タルコフスキーのノートなどの本を若干は、買い込んだりしましたが、どれも小冊子。帰りの飛行機で読めるくらいの厚さですね。

 今夜は、コレージュ・ド・フランスのアンヌ・チャン教授が夕食に呼んでくれました。すでに一度お会いしているのですが、娘さんが、来日したときに、わたしがアンヌさんとともにバーにシャンパーニュを飲みに連れていってあげたことを覚えてくださっていて、ぜひ会いたいと。それでもうひとりの娘さんも含めたご家族の夕食会に呼んでくださいました。
 嬉しいですね。たった一度の出会いが、もう一度の出会いに結びついていく。どんな人とのあいだでもこういうことはすてきなことですが、海外の人とこれが起こると、なにか閉じていた扉があいたみたいな感じがしますね。
 アンヌ・チェン先生には感謝です。あのコレージュ・ド・フランスでさせていただいた講義で、わたしはほんとうに、やっとパリに到着した、という感慨をもちましたから。今年の6月にも、コレージュ・ド・フランスで国際シンポジウムが開かれ、きっとわたしも参加すると思います。まだまだ、なにかが続くかな?


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