破急風光帖

 

★  日日行行(284)

2020.01.06

* 素晴らしい映画でした。今朝、書きかけていた原稿に一区切りをつけたので、母親を見舞いに病院に行った以外はずっと家にこもってもいたし、と午後から研究室からある本をもってくることも兼ねて都会へ。電車のなかで、そうだ映画はなにやっているんだろう、と調べてみたら、観ないわけにはいかない作品がかかってました。

 なんと『シュヴァルの理想宮』!えっ、こんな映画があるの??とびっくり。上映時間もぴったり17時から。恵比寿のガーデンプレイスの映画館に行きました。
 なにしろ、シュヴァルの理想宮は、わたしにとっては、ブリコラージュの傑作であり、6年前に東大の院生たちとようやく見に行ったなつかしの建築です。でも、あくまでも郵便配達夫シュヴァルの悲哀に満ちた、しかし断固たる人生をきわめてリアルに描いた映画。わたしはシュヴァルがどういう人生を送ったのか、まったく調べたりはしていなかったので、驚きとともに多くのことを学びました。いや、学んだというより、泣けましたね。
 風景も、19世紀末から20世紀前半にかけてのフランスの田舎の家族の生活も、すべてが美しい。それだけで感動します。しかも、出てくる役者が半端ではなく、うまい。顔の表情の細かな表現。素晴らしい映画でした。
 監督はニルス・タヴェルニエ、シュヴァル役は、ジャック・ガンブラン、その妻を演じたレティシア・カスタも名演技でした。フランス映画、やはり好きだなあ。
 一言付け加えておくと、わたしにとっては、ブリコラージュは「自由」の実践です。わたしもシュヴァルのように、残りの人生をかけて、ひとつの「宮殿」(ことばの、かな?)を本気で、作ってみようとしなければなりません。新年のはじめに観るには、最高の映画でありました。


↑ページの先頭へ