★ 日日行行(281)
2019.12.28
* 「世は短くして意は常に多し」ーー陶淵明のある詩の冒頭の一句です。
たまたま自宅の書棚にあった中国詩人選集の一冊をひさしぶりに手にとって出かけたというだけ。電車のなかでぱらぱらと、若いとき、20代前半によく読んだ詩を拾い読みしました。大学院の授業で「桃花源の詩」についてレポートを書いて、とりわけその末句の「後遂無問津者」に焦点をあてて論じたことを思いだしながら。そろそろわたしも、かれの老いた孤独の境地に近くなってきたんではないだろうか、と思いつつ、ぱらぱらと読む。でも、分かるのですが、どこかちがいますね。こちらは「襟をおさめて独り静かに謡えば 緬焉として深い情いの起こる」というところにはまだいかない。その限りでは、まだ、投げうっていないものがあるということかなあ、とも。いや、まさにここからこそなにかがはじまるのだ、という思いかなあ、とも。
で、そんなことを考えながら、行きつけの鮨屋のカウンターで、一杯の田酒の杯を傾ける。終っていくこの年。表は明るく静かにすぎていったのだけど、裏ではなにかわからない激しさが通っていった感じもしますね。
問うべき「津」(港のことですけれど)はどこにあるのか。案外、即刻、足元だったりして。暮れ行く2019年。粛々と。津津と。悄悄と。