★ 日日行行(268)
2019.10.24
* 今週は月曜に紀尾井町ホールにピアノを聴きに行きました。アレクセイ・ヴォロディンのピアノ・リサイタル。メトネル「おとぎ話」集、チャイコフスキー「眠れる森の美女」、バラキレフ「イスラメイ」、完璧な演奏。でも、ロシア音楽の重厚さにこちらの耳がついていかない感じもあって、満点だが、陶酔しないという感覚。
そうしたら、アンコール4曲。とくに最後のショパン2曲がすばらしく、泣けました。やはり自分が聞き込んでいる曲だと、このピアニストがどう違うのか、その個性をつかむことができる。そこでショパンにではなく、ヴォロディンに感動することができるのですね。音楽が「夢」になる。その「夢」のなかをわたしの心が踊る。ノクターン、夜想曲。夜の思いがほとばしる。
今日はこれから金沢へ、です。星野太さんに招かれて、金沢美術工芸大学で講義をするために。ありがたいですね、こういうお誘いは。出会う学生さんたちの何人かに、わたしにはわからない「刺激」を与えることができたらと願っています。
昨日、たまたま研究室で昔の愛読書ヤノーホの『カフカとの対話』をぱらぱらと読み返していたのですが、はじめのほうに、(すっかり忘れていましたが)、カフカが「成長というのは、内から外に向かってするのだ」と言っているところがあって、心うたれました。存在の樹は、内から外にむかって成長する。若いときはこういう言葉、素通りだったのだと思いますが、この歳になると、そうだよねえ、と合点がいく。言葉の理解が経験の「雲」をまとうというか。昔読んだ本を、もういちど、全部読み返してみたくなりました。そうしたら、きっと、自分がどれだけ「成長したか」がはっきりすると思います。