破急風光帖

 

★  日日行行(250)

2019.07.06

* 今週の後半は、水曜に青学の授業に阿部浩さんをお招きし、昨夜金曜の夜は、工藤丈輝さんの舞踏を観に成城学園前へ。今日の午後は、なんとお江戸日本橋亭に岡本流の新内を聞きに行きました。

 まず今日の新内ですが、これは、じつは、東大表象文化論の一期生高橋幸世さんが「名取」襲名披露ということで駆けつけたわけです。表象文化論の最初の助手だった高橋さんですが、その職を投げ打って、ベルギーのヤン・ファーブルのカンパニーへ。その人が、ニューヨークに最近は住んでいるのですが、なんと新内の「名取り」に!驚きの転身。人の人生はわからない。曲は「十三夜」ーーーしみじみといい唄い/語りで感動しました。広小路からひとりは東へ、もうひとりは南へ。もう二度と会わないだろう、それぞれ極度の苦境にある二人の男女。泣けました。
 昨夜は、工藤さんの「共犯的戯れごと」の会。ベース、サックス、キーボードほかの3人のミュージシャンとのセッション。小さなスペースで少ないメンバーで、しかしそれゆえに繊細に気が通いあい、工藤さんの舞踏の「素」が見えるようなすてきな会でした。わたしの雑誌に、「業曝」というすばらしい舞踏テクストを書いてくださって、それを読んだせいもあるかもしれませんが、いろいろ、なるほど、と思うことも多く、いい時間でした。
 そして水曜の阿部浩さん。やはりリトグラフについて語り出すと止まらない。その黒の深み、輝き、そして人との出会い。時間が来て、こちらは強制終了をかけて、その後は、何人かの学生とともに、カフェでワインを傾けながら、その続き。
 リトグラフー舞踏ー新内、と異なった三つの芸(アート)だけど、それを生きる人は美しい。
そういう人の姿を間近に見ることができるのは、やはり人生の幸福のひとつですね。
 「人として美しい」というのは、画家の日高理恵子さんのカタログに文章を寄せたときに、思わず書いてしまった言葉なのですが、そのことをいつも思います。だから、今年度、大学の最後の年度のテーマは「人」なんですね。
 


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