破急風光帖

 

★  日日行行(247)

2019.06.09

* 昨夜は、本郷で国立天文台の本間希樹先生によるブラックホールの講演をききました。今年の4月10日に世界6カ所で同時会見で発表された、人類がはじめてブラックホールを「見た」という歴史的事件について、日本側の代表者としてその成果に辿り着いた方法や裏話も含めて、ていねいにお話ししてくれました。

 これは4月10日の直後に本郷であったEMPプログラムの講義で、わたしが、「今週のもっとも知的な事件はこれです。こういうことに興奮しないようでは、ほんとうの知性とは言えない」みたいな乱暴なことを口走ったこともきっかけで、EMPが企画してくださった講演会でした。スリリングですよね。本来見えないはずの宇宙の「穴」が「穴」として見えたんだから。しかも、それが銀河系の中心にあるわけです。まあ、わたしのなかにもまだ、18歳のときにあきらめてしまった物理学への憧れがまだ残っているのかもしれませんけどね。

 もうひとつ、先週は、水曜の青学の授業に、高級時計のRolexの日本の会長をなさっているブルース・R・ベイリーさんをお招きして、わたしとトークをしてもらいました。去年の冬だったか、ある方のご紹介でコンサート会場で1分ほど立ち話しをしたときに、ベイリーさんが「白隠とウィトゲンシュタインにずっと関心がある」とおっしゃったのに、わたしが「そう来るか!」と反応して、この春、二度目にお会いしたときに、それでは大学に来てじっくりお話しをしてください、とお願いしました。白隠とウィトゲンシュタインが「心の杖」だったというお話。すてきでした。じつは、それに当日は、ソローの「ウォールデン」が加わったのでしたが。
 これも、こうした不思議な組み合わせの妙に、即座に反応できるのが、わたしに言わせれば知性というものなんですね。それが、リベラル・アーツです。
 だから、先週は、「白隠・ウィトゲンシュタイン・ブラックホール」という公案の週だったかな?つまり、「見えないものを見よ!」「言い得ないことを言え!」みたいな!!!!
 つねに限界を超えようとするのが知性です、はい。わたしが透過しえたかどうかは別問題ですが。
 先週聴きにいったア・カペラも加えて、応答としては、「隻手の声」はポリフォニー!なんて言ってみてもいいかもしれません。
 (でも、ご心配なく、『未来』誌の連載原稿も先週、ちゃんと書きましたよ)。


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