破急風光帖

 

★  日日行行(246)

2019.06.05

* 毎日、遊んでるねえ、と言われそうですが、昨夜は、またコンサートへ。オペラシティで行われた英国のア・カペラのタリス・スコラーズを聴きに行きました。

 バードとかヴィクトリアとか、ちょうど1600年前後、ヨーロッパのルネッサンスとバロックのあいだの決定的な転換期の音楽です。キリスト教の典礼音楽ですが、ヨーロッパ文化の原点のひとつであるポリフォニーの成立に深くかかわるという意味では、じつは西欧文化の基本軸。あまり実際には聴いたことのない音楽なので、チラシを見てチケットを取ったわけでした。お勉強という感覚もありました。素晴らしい声の重なり合い。エル・グレコの宗教画を見ているみたいな。ヒューマンの心とはちがうものが歌われていますね。音楽とは、こういうものであったのだ。それを人間の心へともたらしたのが、バロック/古典時代というものでもあった、と考えたりしましたが。やはりヴィクトリアのレクイエムが圧巻でした。
 このコンサートを知ったのは、じつは先月、新国立劇場にモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』を観に行ったときにもらったチラシからでした。ブログでは報告を書きませんでしたけど、このオペラ公演もすばらしかったです。『ドン・ジョヴァンニ』は、「魔笛」とはちがって、まだ観るたびに、こちらの視点がかわっていく。わたしにとっては、生涯かけて学んでいくオペラ。今回は、ドンナ・アンナ(マリゴーナ・ケルケジ)とオッターヴィオ(フアン・フランシスコ・ガテル)の歌が素晴らしくて、このカップルを中心にオペラ全体を観るという視点が新鮮でした。指揮カーステン・ヤヌシュケ。演出はグリシャ・アサガロフ。2008年初演の再演でしたが、冒頭、ヴェネチアの夜の光景が広がり、ゴンドラにのってドン・ジョヴァンニが現れるというのがすてきでした。これはほんとうに、純粋に楽しかった。いまでも頭のなかでは、このオペラのアリアがいくつも流れています。
 このように人生かけて聴き続ける作品もあり、またこの歳であらたに学ぼうとする音楽もあり、新旧織りなして、わが生の響きの織物。・・・次は、内緒ですが、『トゥーランドット』のチケットを買ってあります・・・「老人」は「少年」のように楽しまなくてはね!


↑ページの先頭へ