破急風光帖

 

★  日日行行(245)

2019.06.03

* 今夜、フランス大使公邸で行われた日仏翻訳文学賞の授賞式(小西財団)から帰ったところです。大使公邸に行くのはひさしぶり。昔はよく行ったものでしたが。今回の受賞者は、加藤かおりさん。ガエル・ファイユの『小さな国で』での受賞でした。

 でも、わたしがこの式に出たのは、妻が、この文学賞のフランス人側の選考準備委員をしているからで、ただ連れ合いという資格でのお供。何人か知人の方とお話しできたのはよかったのですが、のんびりおいしい食事を楽しんでいればいいだけなので楽でした。

 昨夜は、予告通り、表参道のCAYで行われた、仲野麻紀さんの「旅するごはんとおいしいサックス」のコンサートへ。第一部と第二部のあいだに、仲野さんのトークがあったのですが、仲野さんは武満徹さんの話をして、そこで突然、わたしと中島さんの共著『日本を解き放つ』のなかのわたしの武満論の「さわり」を読みあげてくれました。びっくりですね。2月にパリでお会いしたときに、武満さんのことをおっしゃるので、本を差し上げたのでしたが、それを日本にまでもってきてくれたみたい。ありがたいことです。
 彼女も武満さんと同じく、日本ー西欧(パリ)ーその他(中近東など)と3点測量で『普遍的な音楽」を旅している人。ウードのヤン・ピタールとのデュオでしたが、エリック・サティの「心地よい絶望」などすばらしい演奏でした。
 会場に行く途中、国連大学前の青空マーケットで買った、淡い色の薔薇の小さな花束を届けましたが、それは、パリで会った日がわたしの誕生日で、麻紀さんが鮮やかなピンクの百合をくださった返礼でもありました。
 もうひとつ、このコンサート会場で思いがけない人と出会って、コンサートのあと、これもはじめて二人だけで少し喋り合う時間がもてたことも、嬉しかったです。ここでは「秘密」にしておきますけれど。ほんとうにわずかなことなのだけど、しかし人と人のあいだに、なにか一輪の花が受け渡される感覚、それは、やはり美しいと思いますね。
 


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