破急風光帖

 

★  日日行行(226)

2019.02.24

* 終わりが近いのに今日もすてきな日でした。土曜日なので、やはり39番のバスはセーヌ河の手前でストップ。歩いて橋を渡って、車道が閉鎖されたルーブル宮前の広場を横切って、昔からの友人の野本さん経営の國虎屋さんへ。そこで、原田宏さんと笈田ヨシさんと昼食しました。

 笈田さんとは二十数年前にお会いしたことがあるのですが、どういう経緯でお会いしたかすっかり忘れてしまいました。笈田さんも思い出せないと。三日前くらいに日本からお帰りになったばかりとか。映画に出演し、その後は三島由紀夫の「豊饒の海」の芝居に出てらしたとか。33年生まれとおっしゃるが元気なお姿。ピーターブルック演出の「鳥の会議」でマハーバーラタをやったのを、こちらの劇場で観た記憶があります。ピーターブルックの芝居にはわたしはいろいろなことを学ばせてもらったので、とてもなつかしい。いろいろな話をうかがいました。お会いできてよかった。

 笈田さんは用事があってお帰りになって、わたしは宏さんとオペラ通りに。で、そこで「黄色いベスト」にまた遭遇しました。

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 まあ、数千人規模かなあ。警官に前後左右を取り囲まれて、しかし楽しそうにデモしていましたね。
 その後、ピラミッドのカフェで、全日本洋舞協会のたしか会長なさっているのかな、ダンサーの黒井治さんとはじめてお会いして、短い時間でしたが、お喋りできました。これが楽しかったですね。なにしろパリのオペラ座でバレーも教えてきているようで、有名なバレリーナたちのこともよく知っている。
 数年前にオーレリ・デュポンを池袋で観て、ただ彼女が舞台にたって手をあげていくだけなのに、どれほど感動したかを語ったところ、よく知っていて、ほんとうにスター、つまりスポットライトがあたらなくとも、自分だけで輝いてしまう人ですよ、と。そして、「白鳥の湖」の黒鳥のときに、アラベスクのポーズで20秒静止したままだったエピソードをおしえてくれました。
 ほかにもピナ・バウシュとか、大野一雄さんとか、いろいろな方の話をしました。わたしが、カニングハム、フォーサイス、ピナ・バウシュと90年代に対話をしたことがあると話したら、それはすごい、と言ってくれました。そうですよねえ、いまから思えば、とてつもないことですね、全然、専門家ではないのに。
 最後には、あの「ボレロ」のジョージ・ドンの友人だったと聞いてびっくり。留学生時代に、かれの「ボレロ」を観て、やみつきになり、自分のアパルトマンで半裸になって踊る真似をしていた自分を思い出しました。すてきな人と知り合えました。嬉しいですね。
 でも、笈田さんもパリに50年、黒井さんも40年とか。かれらを前にしては、わたしごときがパリへの愛を語る資格はありませんね。

 でも、まだおまけが。
 夜に、サンドラ/パスカルの家に行くので、デプレでバスを降りて歩いていたら、裏道を通ったら、歌声が聞こえる。ちょうどドラクロワの美術館があるフュルスタンベルク広場。その一角の舗道でなかなか美しい女性がオペラのアリアを歌っているのです。サンドラにあげる椿の鉢を抱えていたわたしでしたが、舗道に座りこんできくと、次は「カルメン」。L'amour est un oiseau rebelle qui n'a jamais, jamais connu de loi.....とすばらしい歌声、泣けますねえ。

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 数曲、座りこんで聴いていました。Bravo! なんというプレゼント。今日のアートは舞台。そうしたら最後のシメがオペラでした。街のなかのオペラ。しかし水準は高かったですよ。

 おかげでロハンの中庭には遅れてしまったのですが、夜は、サンドラさん、パスカルさんとお喋りをして、いっしょにすぐ近くの17世紀からある有名なレストランProcoppへ。先日のお礼にご馳走するつもりでしたが、パスカルさんに、ここはわが屋だからヤスオに払わせるわけにはいかない。そのかわり、君の日本文化論をはやく英訳か仏訳しろ、と「脅かされ」?ました。食事中、日本文化について、いろいろきびしい質問を受けて答えなくてならず、まるで審査会みたいだったのですが、合格ということかな? 
 
 
  


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