破急風光帖

 

★  日日行行(194)

2018.11.20

* パリにいます。昨夜着きました。寒い。すでに小雨もぱらついていますが、このまま夜には小雪にかわるかもしれません。昨夜は、泊まるアパルトマンの温水器が不調で、お湯が出ず。なんとか暖房は機能したので、眠れましたが、着いたときはいささかうろたえました。

 でも、よく寝て、今日は、まずパレ・ド・東京でTomas Saracenoの展覧会Carte blancheを観て、それからルイ・ヴィィトン美術館で、エゴン・シーレとバスキアというどちらも30歳前に夭折したふたりのアーティストの展覧会を観てきました。最初のSaracenoの展覧会は予定に入っていなかったのですが、たまたまケイコ・クルディさんがパリにいて、南仏に帰る前にこれを観に行くというので、出かけたのですが、素晴らしい展覧会でした。蜘蛛の巣ほかをモチーフにして、宇宙感覚へと結びつけるまさに21世紀のアートだなあ、と。
 それに比べれば、エゴン・シーレもバスキアもやはり20世紀のアーティストという感じがしますね。つまり、アーティスト本人の実存がどうしても前面に出てくる。とりわけバスキアの展覧会は、短い人生のなかで、かれがこれだけの作品を描き続けたというその持続的エネルギーの質に感動してしまいますね。それに対して、Saracenoのほうは、作家の実存よりは、宇宙の秘密のほうがはるかに前面に出てきます。そこに21世紀を感じるのですね。もちろん、わたし自身は、20世紀の人間だなあ、とつくづく思うのですけれどね。でも、圧倒的ですね、どちらも。圧倒的であるということ、かくも激しくあるということ、それが「美」というものなのかもしれません。
 


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