破急風光帖

 

★  日日行行(191)

2018.11.14

*  仲道郁代さんと金子三勇士さんによる2台のピアノで、モーツァルトの「ピアノ・ソナタ第15番」からはじまって、ドビュッシーの「月の光」やボロディンの「だったん人の踊り」など。でも、寄せてくるピアノの音に耳を傾けつつ、すぐ3列前に座っていらっしゃる白髪の女性の後姿を眺めていました。

  淡いピンクのスーツを召したその方は、美智子皇后陛下。昨夜、紀尾井町ホール。「難民を助ける会 創立40周年記念チャリティコンサート」。会長からお招きを受けて、わたしも、第二部から駆けつけたのでした。平成という時代が終ろうとしている今、この時代の日本にあって「象徴」という難しいお仕事を全身でおつとめになっていたと素直に思われる方のお姿を近くで見ることができる稀な機会。じつは、夕方からは日本デザイン振興会の臨時評議員会もあって、はじめはご招待を辞退したのでしたが、なんとか調節して途中で抜けて駆けつけました。

 戦後文化論を「未来」で連載していますが、この国の戦後文化を考えたときに、美智子皇后は、まさに象徴的な意味での「星」ですね。一等星。わたしのなかにもなんとも言いがたい、特別な思いがあります。そのことを思いながら、「月の光」に身を浸らせるのは不思議な感覚でした。
 「人として美しい」という言葉がよみがえります。激しい純粋さです。


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