破急風光帖

 

★  日日行行(169)

2018.08.02

* 8月。でも、まだBizArts関係の講義がひとつと、代官山ヒルズでの「音楽」についてのトークが残っているので、完全な夏休みというわけではありません。明日は、越後妻里に行かなくてはいけないし。猛暑のなかですが、動き回っています。暑さは、あまり苦にならない体質なので。

 この間、ずっと実家の整理をやってきました。すると、やはり戸棚いっぱいに、わたしが若いときに書いたノートや集めていた本、カタログ、パンフレットなどが出てきます。ときどきびっくりするような発見もある
 たとえば小さな茶色の手帖。1982年/83年頃のノートのなかに、次のような記述をみつけてびっくり。「1983年10月21日 ★ Derridaの宿泊所を調べて(国際文化会館)、六本木まで出かけて一通の手紙を置いてくる。ついでに近くの花屋から、明日、薔薇10本(violet)届けさせるように手配する(カスミ草を入れて6000円)。これで一応、やるべきことはやった、という感じである。気が済んだ」と。へえ〜、忘れてましたねえ。デリダに花を贈ったりしていたんだ、紫の薔薇10本! わたしだなあ、と思います。
 これまでいつも、赤い薔薇をピナ・バウシュと山口小夜子に贈ったと人には言ってきましたが、これからはそれに、デリダへの紫の薔薇も加えなければ・・・

 デリダは次の年にも来日していて、そのとき銀座の鮨屋にいっしょに行った写真が残っているのですが、それがいつで、どうしてだったかも記憶から抜け落ちていましたが、それが5月10日の昼で、朝日出版の中野さんの接待だったことがわかります。そのとき、わたしはデリダに幸福について質問したようで、かれの答えがフランス語で書いてあった。こういう過去の亡霊となった時間の回帰に不意を撃たれて、しばし思いにふけったり、そんなことをしているので、なかなか現在進行形のリアルに戻ってこれないのですね。(もちろん、追憶に浸るという気分であるよりは、たまたま回帰してきた時間をていねいに受けとめて、さあ、どこへ?ーーー送り返しておく、みたいな感覚です)。


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