破急風光帖

 

★  日日行行(157)

2018.06.02

* 昨日は、世田谷パブリックシアターで、山海塾の公演「卵を立てることからーー卵熱」でした。1986年パリが初演ですが、今回はリ・クリエーション。水の面に、天から水、そして砂の二つが絶え間なく落ちてくる、まさに儀礼的な空間。原初的な美しさの舞台でした。

 天児牛大さんの演出ですが、今回は、かれは舞台に立ちませんでした。どうしたの、と思っていたら、最後には出てきていつもの白塗りの身体で山海塾風のお辞儀をしたのですが、公演後の席で、昨年、大病をなさった、という次第をおききしてびっくり。でも、お元気そうにみなさんと交流なさってましたが。わたしの世代で舞台芸術で世界へと羽ばたいた星ですから。わたしも『創造者たち』(講談社)では対談をしていただきましたし。
 でも、天児さんというと、かれがいちばん最初にパリで舞踏を行ったときに、パリ郊外の劇場との打ち合わせの通訳をわたしがやったことを思い出しますね。どういう経緯でそうなったのかはもう忘れてしまったけれど、ともかく天児さんが劇場側に、舞台は「八百屋にしてくれ!」と言うのを通訳できなかったことを思い出します。「八百屋」が、傾斜した舞台のことを指すということをわたしが知らなかったのは、当然でもあるのですが、いまでもそのときのことを思い出しますね。1982年くらいだったはず。
 昨日は、元地域の学生だった芳野まいさんにも会いましたが、パリに留学していた彼女を、天児さんに紹介したのは、わたしだったそうで、これが1995年かな。ほかにもありますが、そのように天児さんとも人生のいろいろな時点で交差している。それを忘れずに、いまだにわたしを招待してくださる。ありがたいことです。
 舞台を見ながら、わたし自身の想像力は、なぜか卵から龍がかえるところを想像したりしていました。原初の生命としての龍。でも、そうなら、「水」はわかるのですが、あの「天」から降る「砂」は何でしょうか?砂時計の「時間」でしょうか?
 


↑ページの先頭へ