破急風光帖

 

★  日日行行 (160)

2018.06.13

* 先週金曜夜の神楽坂モノガタリでの國分さんとの対話の会。楽しみました。

 冒頭、國分さんが、「小林先生はほんとうに心の師です」と宣言してくださって、わたし、そんなこと言われることあまりないので、ちょっとびっくり。でも、そこから出発して、國分さんとわたしとの微妙なスタンスの差がくっきり浮かびあがるおもしろい展開でした。わたしのほうは、これも、ほんとうはいままで研究なんてまったくしていないんですよね、國分さんのスピノザのように、固有名詞を冠した本を一冊も書くことなく、けっして固有名詞をかかげて、その専門家という振舞いをしてこなかった、その意味では、徹底して「詩人的な」振舞いをしてきた自分を振り返ったりしました。
 途中からは、「午前4時のブルー」の巻頭を飾る写真を提供してくれた高木由利子さんも登壇してくださって、素敵なスペースで会話がはずみました。来てくださったみなさん、ありがとうございました。対話の中身は、雑誌の次号に一部を整理して載せたいと思っています。

 これは満員でもうチケットが手に入らないのですが、昨日から日生劇場ではじまったオペラの「魔笛」、プログラムにテクストを書いています。高校生たちにオペラを、という趣旨もあるということなので、16歳の君にむかって、68歳が「魔笛」の魅力を伝えるという仕掛け。そのきめ科白は、
「他者を愛することができるためには、一度は、母親の無限の愛から抜け出て、自分を他者へと開いていくのでなければならない」というもの。夜の女王のアリアが聞こえてきますね。でも、この女王の叫びを聞き取ったうえで、さらに一歩前へ、と若い人たちに言ってみたかったのですが、これがどれほど難しいことか、みなさんなかなか「夜の女王」から自由にはなれませんね。
 わたし自身は、今週土曜の一般公開を観に行きます。


↑ページの先頭へ