破急風光帖

 

★   日日行行 (97)

2017.06.07

* 「そう。光というと、みんなお日さんの光と思うんだけど、そうではなくて自分で自分の光をつかみとる。あるいは外の光をつかみとる。手を合わせるというのは、どこの宗教でも大体同じですよね」(田原桂一)

 昨日、6月6日、田原桂一さんの訃報が届きました。昨日、肺がんで65歳でなくなったと。かれとは、もう随分、会っていませんでしたが、わたしの『思考の天球』の表紙はかれの写真でしたし、『創造者たち』(講談社)では、12人の対話者のひとりになっていただきました。1997年1月ですから、いまから20年前に行われた対談からかれの言葉を引用しました。わたしにとっては、かれは、パリで成功した写真家=アーティストで、サン・マルタン運河の近くのかれの素晴らしいアトリエを訪れたことをいまでも思い出すのですが、かれがパリを捨てて(?)日本に帰ってきてからは、ほとんど交渉がありませんでした。でも、かれが亡くなった報せはかなしいですね。ほとんど同じ歳だったし。星座の一角の星が消えるという感覚。でも、かれと話した一瞬の時間の記録が、本として残っているのはよかった。本自体はとうの昔に絶版なのですが。こんなふうにおたがい「光」のことを語り合ったのだとあらためて思います。御冥福を祈ります。


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