破急風光帖

 

★   日日行行 (96)

2017.05.31

* 5月が終ります。空気はすでに湿気をはらんで梅雨の気配。忙しい月でしたが、春の憂鬱な低迷からは少し脱したのか、身体はなんとかステップを踏むことができました。

 関係する財団の仕事のほかにもいろいろありましたが、同時に、久しぶりに映画を観たり(「僕とカミンスキーの旅」(ヴォルフガング・ベッカー監督)でしたが、おもしろかったですね)、ワタリウムで大倉源次郎さんが坂本龍一の音楽に対して小鼓を打つパフォーマンスを聴きに行ったり、友人関係で画廊の展示もいくつか、さらに国立新美術館の草間展/ミュシャ展など、「楽しい表象文化論」も実践。その意味では、わたしらしく生きることができたかな。授業を通じて、みなさんと「渡り合う」のも楽しいですね。勝手なことを言っているだけですが。昨夜は、Vergerの会の第3回。桑田さんとジャコテの散文を読みました。冬の終りに雲のように咲き出るアーモンドの樹が主題ですが、それは、やっぱり魂âmeの樹、ふたつの世界の境界にあって、雪や雲のように湧きあがる魔法の樹、つまりは詩の樹なのですね。雪が降る峠のようなその境界を、さあ、越えていくのか、いかないのか。でも、そのなかに少しづつ消えていくわが実存にOuiと言う、そのような決意の散文なんだとわたしは勝手に理解しましたが。このようなことば、しかも自分にとっては、よく知っているが、あくまでもétranger(外国のもの)であることばで語られる「秘密」、ほんとうは、これ以上の「楽しみ」はじつはないのですね。フランス語は、その意味では、わたしにとってのアーモンドの花雲であるのかもしれませんね。
 


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