破急風光帖

 

★  日日行行 (72)

2017.01.30

* 最近は、夕方の西の空、明星(金星)の輝きがひときわ鮮やか。そのすぐ斜め上には火星も光っているし。もちろん、シリウス、プロキオン、ペテルギウスも瞬いている。今夜はとくに細い月の円弧もすてきでした。まるい影もはっきり見えて。

 ある理由があって、たぶん小学生のとき以来なのだと思うけれど、「星空ガイド」を先日、買いました。そうしたら、子どもの頃は、全天星座盤をもっていて、それをぐるぐるまわしてよく見ていたなあ、と思い出した。基本的に理系の精神の子どもでしたね、鉱物標本を集め、ビーカーなどの実験器具で遊び、ファーブル昆虫記や15巻本の子どもむけの科学シリーズがお宝だったなあとか。小学6年生くらいで、その当時知られていた素粒子の名前を全部、暗記してましたね。イタリアの物理学者のフェルミが憧れだった。と、まあ、こんなこと書いても意味ないのですが、今日、黄昏時に、近所の高台を散歩しながら空を見上げていたら、心が夜空に吸い込まれました。こんなこと久しぶりです。
 そうそう、二日前だったか、デュラスの「ヒロシマ・モナムール」に出演していた女優のエマニュエル・リヴァの訃報が出ていて、2008年だったか、彼女が来日したおりに、日仏学院でお会いしてお話ししたことを思い出しました。たしか吉田喜重監督とごいっしょだったはず。彼女の写真展のときでした。ただ一度、ちらっとお会いしただけ。なぜかみなさんといっしょにワインを飲んだことをよく覚えているのですが、そうやって一瞬だけ人生で時空をともにした人、たまたまその人が有名な人なのでその死がこうしてわたしにまで届けられる。小さな星がひとつ消えたような感じと言ったらいいか。とすれば、わたしが出会った人たちの星空というものがあるかもしれませんね。遠近によって星の明るさはちがうけど、どれも輝く星。星座も形成されていたりして。天の川もあって。銀河、星雲、彗星、流れ星、ブラックホールもあったりして。冬の夜空の夢想です。
 


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