破急風光帖

 

★ 日日行行 (64)

2016.11.18

* 昨日は駒場で、インド・ケララの演出家シャンカルさんが、わずか18時間のワークショップでつくりあげた11名の役者(インド・スリランカほかの俳優3名に、駒場の大学院生など)による20分の無言劇「雪の駅」を観ました。

 もちろん、太田省吾さんのあの「水の駅」を踏まえたもの。「水」を「雪」に変え、その「雪」にインドで唯一、雪が降るカシミールの政治状況を重ね合わせることから構想されたものだそうですが、わたしには、この時代にわれわれの誰もが予感しているカタストロフィーへの凝視、そして、その不可能な希望へのメッセージと受け取りました。舞台のあとにシンポジウムが続き、そのあとには、懇親会。わたしは早めに出たのでしたが、帰り際の挨拶で、シャンカルさんに、「雪は何なのだろう?」と問いかけてみたら、即座に、それはfrozen lifeなのだ、というお答え。詩的な、美しい答えでした。わたしにとっては、その瞬間もまた、演劇的でありました。
 前日は、青山学院のラボ生たちと、庭園美術館のボルタンスキー展を観にいきました。カタログに短い文章を書いたのでしたが、カタログはまだ刊行されていません。わたしのテクストは、「クリスチャンにささやく」というもので、これもちょっと演劇的な仕掛けになっています。
 時代は、どこか亡霊的なものになりつつある。時間そのものが、亡霊的になって、つまりささやき、語り、そう、沈黙という形式すら通して、呟き、暗示している。

 ついでにご案内ですが、来週22日火曜、18時から駒場で、わたしの『表象文化論講義 絵画の冒険』(東京大学出版会)をめぐって、若い学生たちによる書評会が行われます。UTCP企画でもありますので、詳細は本サイトのイベント欄をごらんください。桑田光平さんのオーガナイズです。これもありがたいことです。


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