破急風光帖

 

☆ 秋のbillet (5)

2016.11.01

*「もはや詩が書けない/詩のないところに詩がある/うつつの断片のみ詩となる/うつつは淋しい/淋しく感ずるが故に我あり/淋しみは存在の根本/淋しみは美の本願なり/美は永劫の象徴」(西脇順三郎) 

 たぶん、わたしは「淋しみ」という言葉は使わない、「美」も同様。でも「うつつの断片のみ詩となる」はもらってもいい。Billet とはそういうことだから。で、「旅人かへらず」を少しだけ真似れば・・・。
 (1)
 羽田空港第2ターミナル57番ゲート近く
 mon enfant, ma soeur
もちろんボードレールの詩の一句だが
 同時にわたしのメールアドレス
 わが子、わが妹(姉)よ
 それはほかならぬわたし自身の魂
 と突然、わかる
 順三郎ならば「幻影の人」と言っただろうか
 だが、わたしが旅人なのか
 出発は午前9時40分高松行き
 それともわが子、わが妹が旅人なのか
 songe à la douceur d'aller là-bas vivre ensemble
 いったいどこにlà-bas (彼方)があるのか
 どこにもないところがlà-bas なのか
 知らず
 だが、そこに行きついて
 vivre ensemble (いっしょに生きる)
 そのdouceurを、その甘美を
 (搭乗開始のアナウンス)
 ともに夢みてほしい
 とわたしもまた
 つぶやく
 
 
 


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