★ 日日行行 (22)
ご案内のとおり、 10日に日比谷図書文化館で、朝吹真理子さんと対談しました。
今回は読書の愉しみを「チェス」形式で展開しようと、それぞれが語る本をキングやルークといったチェスの駒に見立てての設定。それならば、と大昔、友人(渡辺公三さんでしたね)からお土産でいただいたアフリカのチェス盤のセットをもっていって、舞台前面に置きました。われわれの後ろにも図書館の移動本棚をもってきてもらって、少しくつろいだサロンでのお喋りを演出しましたが、数年ぶりにお会いした朝吹さんと、たぶんはじめて、ふたりで向かいあって、お喋りができました。
わたしのほうは、彼女の『きことわ』を少し丁寧に読み込んだことを(これは主に観客のみなさまへですが)語って、それをきっかけに、大きな流れとしては、時間の不思議について語りあったということになるかな。吉増剛造さんや武満徹さんという懐かしい名前も飛び出して、わたし自身にも、もうこれが、過去なのか、未来なのか、現在なのか、わからないような不思議な時間でした。
あれは80年だったか、武満さんとパリでお会いしたことを思い出したり、そういえば、明日から行くバリ島の不思議を最初に開示してくれたのが、武満さんのエッセイだったなあ、と感慨にふけったり。いくつもの時間の交錯がありました。
人間が誰でも、いつでも、Time と Timeless(朝吹さんの現在、『新潮』で連載中のタイトルです)の背中合わせを生きている、そしてこのDream-Timeとしてのあり方こそ、われわれがほんとうは、孤絶した個人なのではなく、限りなく、重なりあい、おかしあい、関係しあっていく、根源的な共存在なのだ、というところに、われわれを導いていかないわけにはいきません。その幸福と呪いがからみあったあり方こそ、ラディカルに人間的なのではありますが。Purify!--そう叫んで、明日、雨期のまっただなかの《南》へとくだってみます。