破急風光帖

 

★ 日日行行 (12)

2016.01.08

★ 悲しい報せばかりではない、感動的なこともありました。昨年12月20日ですが、山形からの帰り、東京駅で新幹線を降りて、そのまま本郷キャンパスへ。ル・クレジオさんの対話形式の講演会がありました。

 文学部の中地さんとの対話で、青春と老年という二つの時代をキーワードにみずからの「書くこと」を語った講演、後ろのほうで聴いていましたが、感動しました。どの言葉に感動したかは、ここでは明かさないでおきますが、わたしとしては、わたしにとっての「これからの季節」を生きるための貴重な指針(モデル)を得た思いがしました。
 講演のあと、中地先生のお招きで、ル・クレジオさんを囲む少人数の会食の席にも連ねさせていただいたのですが、その会場に向かうときに、なぜかかれとわたしがふたりだけで、本郷の銀杏の下の暗い夜を歩き、ふたりだけでタクシーに乗りました。その間に、講演から触発された質問をしたりして、感動から出発して、なにかを確かめられたことが嬉しかったですね。忘れがたい深さの瞬間でありました。
 はじめは「もう年だし、会食には30分だけおつきあいして、あとは失礼します」と言っていたル・クレジオさんですが、場が楽しかったのか、少しお酒も召し上がって、2時間以上、最後までおつきあいしてくださったのも、嬉しかったです。かけがえのない時間ではありました。帰りの途で、ひとり「これ以上のクリスマス・プレゼントはないよなあ」と呟きましたが、中地先生の友情溢れるご配慮に感謝します。


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