★ 日日行行 (9)
★ 報告が少し遅れましたが、先週の出来事は、なんと言っても、11月20日に駒場キャンパスで行われた笠井叡さんとの対話の会でした。駒場でほぼ30年近くにわたって、さまざまな人を招いて講演会や対話の会を行ってきた(招待者の延べ人数は200人を超えると思います)わたしですが、そのわたしがいままでない経験をさせてもらいました。
なにしろ、はじまった瞬間に、笠井さんがゆっくり観客席から舞台(学際交流ホールです)に近づき、そのまま腕をあげて踊り出す。流れてくるのがマーラーの「アダージョ」。そして、笠井さん自身も踊りながらパウル・ツェランの詩を朗読。感動しました。ああ、自分もこういうふうに踊りたいんだなあ、というのがよくわかり、共感が湧き上がってくる。途方もないギフトで、それは、ありました。素敵ですねえ。
その後、わたしも舞台にあがって、対話となったわけですが、その同じ週にあった笠井さんたちのオイリュトミーの舞台(西国分寺)を踏まえながら、パリのテロリズムというactuelな出来事にも触れつつ、カラダとコトバのあいだで、真剣な対話が行われました。笠井さんは、一瞬たりとも気を抜かない、まさに激しい優しさをもって、コトバを発する。わたしもまた、それに応えるべく、ダンスをするかのように全身で受けとめてみる。準備したコトバではない、そのときの真のコトバがやりとりされて、空間に「ヒカリ」が満ちた、ということにさせてください。対話のタイトルは、(わたしがつけたのでしたが)「カラダ/コトバ/ヒカリ」というものだったのです。
時間がきて、対話が終ったとき、わたしがあらかじめ頼んでおいたのですが、マーラーの曲がもう一度、流れた。そして観客のなかに、素晴らしい百合をわれわれに1本づつ用意してきてくれた方がいた。その方が、「だって、先生も踊るのだと思っていたので・・・」。と、なれば、踊らないわけにはいかない。いただいた百合を抱えて、わたしも、笠井さんも、思わず舞台でダンスをはじめているのでした。わたし、笠井さんとデュオをした!体調不良だったこともあって、途中で、転んだのでそこでやめておきましたが、笠井さんの「ヤサシサ」に打ちのめされた会でした。
そのとき話題になったことですが、来春、ぜひ笠井さんからイニシエーションを受けたいと願っています。