破急風光帖

 

★ 日日行行 (5)

2015.10.22

★ 先週の岡山・就実大学でのシンポジウム、駒場の最終講義のときにも触れた、人文知の四元的マトリックスの話を核にして、いま、世界的(しかも世界では、「日本発」とも言われている情けなさ!)な人文科学の危機に対して、われわれもまた、20世紀的な方法そのものを見直す必要があるのではないか、という問題提起をさせてもらいました。それを一言で言うなら、ディコンストラクションからリコンストラクションへ。

わたしのような、ある意味では、デリダの思考の影響のもとでディコンストラクション的クリティークをずっと実践してきたつもりの人間でも、そうしたロゴス解体の方向だけではやっていけなくなっている歴史的な状況を感じていますが、そうした危機意識が、若い人文科学者たちに共有されているのかどうか。むしろ伝統的な方法による(訓詁学的な)読解にとどまる研究への回帰現象すらあるのではないか、と疑問に感じることもあります。半世紀前に比べれば、表象文化論的にと言ってもいいかもしれませんが、対象となる文化領域は大幅に拡大したわけですが、理論はほとんどかえりみられることがない。情報の雲のなかに飲み込まれていくだけのようにも思われます。
 だから、岡山では、講演の最後に、つい「いまや、固有名詞を翻訳しなければならないのだ」と叫んでみましたが、さあ、誰かに届いたかな。
 わたし自身は、こう言った以上、乏しい能力を振り絞って、それでもなお、このリコンストラクション作業を少しでも、自分なりに進めたいと思っています。まあ、大河に小石を投じるようなことにすぎないのですけれど…


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