★ 秋の旅日誌(7)
2015.09.17
★ 今回の旅も終り、これから帰国の便に乗るためにロワシー空港に向かいます。今日は雨に降られました。朝、甘くみて傘を置いて出たので、びっしょりです。ルーブルでドラクロワを見て、考えていたことを確かめ、しかしあまりに多い観光客の、しかも団体ばかりでうんざりして、早々に退散。こういう世界的なアートコレクションというものの起源と歴史を考えないわけにはいきません。
その後は、アラブ文化会館に行って、はじまったばかりの「オシリス」展をみましたが、これは小さいけれど充実していました。ナイル河口沖の海底から引き上げられたものを中心にして、オシリスというエジプト文化の核心のフィギュールに迫る展示は多くのことを教えてくれました。こんな起源にまで遡るとすれば、この旅は、もうここでいいな、終点だな、という感じがします。昨夜は、天台宗の声明(東京の深大寺)を聴いて、いっしょにいった友人たちとチベット密教と日本の密教の違いについて議論したりもしたのでしたが、日常のコンテクストをはずれて、世界を学ぶことがやはり旅の大事な目的。ひさしぶりに、学ぶことに徹した旅をさせてもらいました。
定年という、直接的な責任を負わないでいい立場にあって、こういう機会を与えてくださった駒場のみなさまに感謝。そのかわりに、さらにいっそう激しく、わたしは学ぶのでなければならないと覚悟しています。(言い忘れたけれど、昨日は、近代美術館でヘンリー・ダーガーの展覧会も観ました。これもいい展覧会でした。Art Brut の文脈で語られることも多いようですが、それとは少し違いますね。かれの存在の悲惨が最後に、花園へと辿り着くように感じられて、泣けました)。