★ 秋の旅日誌(5)
昨日の土曜、ロンドン滞在の最後の日。最後もやはりアート、絵画です。コートルード・ギャラリーとブリティッシュ・ギャラリーで1日を費やしました。いや、事前に調査をして行ったわけでもなく、そのつもりもなかったのに、行き当たりばったりで行ったのでしたが、この夏に本文をどうにか書き終わった絵画論の教科書で触れたりもした作品にお目にかかることができて、ありがたいというか、ああ、この旅は、個人的には、絵画論の一応の脱稿に対応した絵画作品の現物を観る旅であったのだと納得してしまいました。
いくつもの出会いがあるのですが、ひとつだけあげるなら、やはりマネの「フォリー・ベルジェールのバーメイド」ですね。わたしは、この作品がなぜか合衆国にあるとばかり思い込んでいたので、それがロンドンにあるとは、とびっくり。わたし自身がなんども取り上げ、論じたことのある作品に、とうとう出会えたと、その前で15分くらいは佇んでいたでしょうか。やはり現物を見て浮かんでくる新たな思いみたいなものもあって、人がそう多くはない、洒落たコートルードの空間のなかで、自分にとっての「絵画の冒険」を思い出していました。
ブリティッシュ・ギャラリーでも同じようなことはあったのですが、それは秘密にしておこう。両館を通じて、自分の眼があらたに開かれたのは、パルミジャニーノかな。とても惹かれるものがあります。それとあらためて、(わたしは本では取り上げなかったのですが)、ティティアーノの超絶的な「うまさ」、そしてそれを打ち破るティントレットの激しさに打たれました。まだまだたくさんありますが、消化するのに、しばらく時間がかかります。これから行くパリでも、7月に観ることができなかったドラクロアをじっくり観ることにしていますので、まだまだ続く絵画の旅です。
★ 今回のこのIHSの研修は、大石さんの素晴らしい企画力のおかげで、イギリスの19世紀の文化の動きについてかなりはっきりとイメージすることができるようになりました。ウィリアム・モリスについても、ラフェエロ前派についても、さらにはキーツなどのロマン派についても理解が深まリました。フランスと違う途を行ったイギリスの19世紀のあり方にあらためて興味がわきました。
★疲れ果てて、ブリティッシュ・ギャラリーを出てぶらぶらと国会の方に下っていくと、そこでは難民支援の政治集会がちょうど終ったところ。チャーチルの銅像の下を行き交う参加者のスナップをサムネールにあげておきましょう。夜は、大石さん、桑田さんとケンジントンのレストランで打ち上げの杯を傾けました。今日、昼の飛行機でパリに向かいます。