★ 秋の旅日記(3)
★ 日本は大雨だというのに、昨日のロンドンはまるでロンドンらしからぬ快晴。青空が広がり、秋の陽射しがいっぱいに差し込んでいました。
★ 朝はみなさんとロンドン北東の端、Walthamstowにあるウィリアム・モリス・ギャラリーへ。予想以上に充実した空間で、モリスの全活動をカヴァーして見せてくれています。案内の女性の説明も要を得てみごとなものでした。その後、Liverpool Street のパブで昼食をとりながら、学生のみなさんからの中間報告。英語で喋る人が多かったですね。自然と英語が出てくるところが、素晴らしい。
午後は、それぞれのロンドンのフィールドワークに出かけるみなさんとは別行動で、桑田さん、星野さんとTate Modernへ。コレクションを中心に観ましたが、わたしの集中をいちばん誘ったのは、やはりロスコーの9枚かな。これにふたたび会いたい、そのContemplation の空間をもう一度感覚したいというのがひとつの動機でもありましたから。その隣りの部屋の、ーーこれは新作ですがーーーーリヒターがジョン・ケージの音楽に捧げた数点も圧倒的でした。ほかにも、ナム・ジュン・パイクの小展覧会とか、ベーコンの1点とか、眼を奪ったものはたくさんありますが、わたしにとっての第3位は、ピカソの1909年のフェルディナンドの頭部の彫刻でしょうか。キュビスムが生まれるときに決定的な役割を果たした「絵画としての彫刻」、こんなところでお目にかかるとは、と嬉しかったですね。(一言断っておきますが、展覧会を観たときは、かならずあとで、自分の記憶のなかでなにが残って輝いているか、をチェックしなければならないというのが、わたしの掟。なにを思い出せるか、そのとき戻って来る感覚の質はどういうものか、それを問わなければならない。そうでなければ、たんに「わたしは見た」で終ってしまいます。それは、「わたしは何も見なかった」と同じですね。翌朝目覚めたときに、戻ってくるものだけが、ほんとうに「見た」ものなのだ、とわたしはいつも授業のときに言っていました。展覧会だけではなく、人生のすべてに言えることでしょうけれど)。