破急風光帖

 

★ 風光三昧(8)

2015.08.21

★ はじめてのことですが、高野山に行ってきました。
  UTCPとハワイ大学が毎年の夏に行っている3週間の哲学セミナー。今年は、日本で行われる番で、東京/京都/高野山/京都というスケジュール。テーマは「言語の哲学」。わたしは、高野山で行われたセミナーに参加。蓮華定院というお寺にみなさんと3泊し、ご住職の講話の前、今年のセミナーでは教員の最後の講義という「トリ」の役どころ。

 しかし、わたしの前は、空海の専門家でもある、わたしの駒場の元先輩同僚であった竹内信夫さんの講義。いくらなんでも、竹内さんの後に、空海について語ることはできない、と最初は、全然、別のことを論じるつもりだったのですが、せっかく高野山で話すわけだし、ご挨拶くらいはしておかないと、と少しかじってみたら、これがやはり、抜群におもしろい。数日、空海全集を読みふけり、結局は、あの「声字実相義」のタイトルをどう自分なりに翻訳するか、という問いに頭が占領されました。

 結局、ペーパーも用意することなく、英語で2時間、「声字実相義」から「即身成仏義」という空海のメインのテクストを、あくまで自分なりに読むその哲学的構えを語った次第。でも、これは大きな実りをわたし自身にもたらしましたね。今後の自分の哲学の方向性を、奇妙な言い方ですが、はっきりと、Integrated Esoteric Phenomenologyと見極めがついた。合わせて、たぶんもうひとつ、まるで両界曼荼羅のようにと言おうか、Sur-Existentialism がわたしの思考が進むべき道だと思います。

 いずれにしても、「3日でわかった!空海の哲学」という無謀な読みをひとつのチャレンジとして語ってみたということでしょうか。無謀乱暴は承知ですが、訓詁注釈ではない、生きた哲学のためには逸脱は宿命と開き直っておきましょう。

 ほかにも阿字観ならぬA字観とかB字観とか、はてまた西田哲学の言語論とか、触れたいトピックはたくさんあったのですが、時間切れ。夏という季節に、空海という巨大な思考と少なくとも向かいあおうとはしてみた、そういう貴重な経験を、高野山という聖なる場所で実践できたことは、わたし自身の生にとっても、なにか決定的な区切りを刻みこむような出来事であったと言っておきたいと思います。
 高野山に来い!と呼びかけてくれた、UTCPの中島さん、梶谷さん、ハワイ大の石田さん、エームズさんに深く感謝します。やっぱりUTCPっていいなああ!!

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