★ 風光三昧 (7)
2015.07.31
★ 7月も終わり。パリの「夏の光」への旅を行うことで、なぜか、自分が「定年」という区切りを通過したのだというその実感がはじめて湧いてきた一月でした。「区切り」ないしは「中間休止」と言ってもいいが。
この区切りの時期に、多くの友人たちとさまざまな形で会食して、「旧交を温める」というのは凡庸な言い方だが、友情を温めかえすことができたのは、嬉しいことでした。今週だけでも、火曜には、昨年夏ヴェトナムをいっしょに旅行した古田元夫さんほかの方々と神泉で新鮮なお魚を、また昨日の木曜には、わたしの最終講義のあとのダンス・パフォーマンスを成立させてくれた、音楽家の清水靖晃さん、舞踏家の工藤丈輝さんらと、こちらは銀座で、鱧と鮎をいただきながら、それぞれ一献酌み交わしました。
仕事の方はということになると、やはり「絵画の哲学」の原稿かな。最終章のひとつ前の章が、ジャクソン・ポロックがテーマなのですが、飛行機に資料を持ち込んで、パリで書きはじめたものが、結構、難航して、最終的には、昨日、なんとか一応の脱稿。ポロックの場合は、どうしても作品の分析解釈だけでは足りずに、かれ自身の存在のあり方に踏み込まないわけにはいかない。そうしてかれの生、その存在へと降りていくと、やはりいまさらのように、真正のアーティストであるということの恐るべき「悲劇」を感じないわけにはいきません。自分の存在をなにものかの「通路」とすることの困難と危険。アートとはけっして無傷なものではない、むしろ傷そのものである、とあらためて思ったりもしました。だが、これで、あとはアンディ・ウォーホルを書いて終わりです。なんどか半月以内に結着をつけたいと思っています。