ブログ 2019年05月

2019.05.30 Permalink

2019年5月23日(火)に第3回「障害と共生」研究会が開催された。研究報告を行ったのは、石渡崇文と井之上祥子(UTCP)である。

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はじめに、石渡が「ジョルジュカンギレムと医学の科学性」というタイトルで報告を行った。医学は一人ひとり異なる患者を相手にする以上、本質的に「個」にかかわる分野である。科学を「一般的なものについての知」と捉えるのであれば、医学は本当に科学と言えるのだろうか。発表では科学と生命との関係から医学の科学性を考えようとしたカンギレムの医学思想を紹介した。ディスカッションでは外科と内科を区別する必要性や、カンギレムの科学性概念が臨床家にとってどういう意味を持ちうるのかといった問いが出された。「医学の科学性」という一見して捉えどころのないテーマを扱ったが、結果的にはそのおかげで異なる分野同士に共通する関心を引きだすことができたのではないかと思う。


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 続いて井之上が「臨床心理学と科学の関係について」というタイトルで報告を行った。発表では臨床心理学の中で“科学”という言葉がどのような文脈で用いられてきたかを振り返り、捉えなおすことで臨床心理学の研究や実践を説明しうる新たな枠組みについて検討することを目的とした。
ディスカッションでは『個』を扱う臨床心理学がこれまで科学的な保証をどのように担保してきたか、また今後どのように展開されていくのかについて議論がなされた。またその中で、心理療法における「見立て」について定義することや標準化することの難しさや「見立て」を修正するということがどのような意味を持つのかについて様々な意見がでた。今回、専門分野の垣根を越えてひとつのテーマで発表を行うことは自身の理解の枠組みを拡げる機会を与えてくれたように思う。


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(報告:石渡、井之上)


2019.05.30 Permalink

2018年4月21日(日)、2018年冬期コース「生きづらさを考える」の最後のイベントとして「クロージング・ワークショップ」が開催されました。

前回に引き続き、これまでのコース参加者の中からワークショップや発表の企画を募り、当日の参加者には各企画に自由にご参加いただくという内容でした。ご提案いただいた企画は、哲学相談ワークショップ、音楽に関係するワークショップ、当事者研究に関連する企画2件、参加者同士のディスカッションを促す企画、そしてポスター発表が2件と、盛りだくさんの内容でした。


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 また、当日は企画だけでなく、イベント全体の司会・進行についても、参加者の方にご協力いただきました。全ての企画が終了した後、参加者とスタッフが輪になって座り、当日のワークショップやこれまでのコース全体の内容についての感想や意見を共有しました。

 「生きづらさを考える」コースでは、様々なお立場の方、様々なご経験を持つ方々との間に、言葉や音楽、イラストなどを通じた交流が主体的に生まれていったことが特徴的だと感じられました。コースに参加してくださった皆様、「生きづらさ」について研究テーマを通じたご講演をしてくださった講師の皆様に、改めてお礼を申し上げます。(報告:山田)

2019.05.30 Permalink

2018年3月31日(日)参加者によるワークショップが開催されました。
ワークショップは3部構成で開催され、第一部では「レベル別、生きづらさデータ収集」と題した受講者企画が行われました。参加者だけでなくスタッフも参加し、日常の中で感じる「困りごと」や「安心できること」などについて、まずはA4の紙に書き出しました。 続いて、その紙をホワイトボードに貼っていき、それがどのくらいの生きづらさレベルなのかを段階的に表現しました。最後に、それぞれが生きづらいと感じていること、逆に生きづらさが軽減する場面、また、集まった意見を見て思ったことなどを、参加者全員で共有しました。


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 第2部では、3つの企画が並行して行われました。それぞれ、「関係性についての当事者研究」、「生きづらいままでも生きられる社会ってなんだろう?」というテーマでのディスカッション、次回カレッジに向けての「ポスター発表準備」でした。

「生きづらいままでも生きられる社会ってなんだろう?」というテーマでのディスカッションでは、生きづらさに対処するために、自分ではなく周囲に変わってほしい部分をあえて図々しく言ってみるという趣旨で行われました。約10名が参加し、「自分の生きづらさを商品にしてみよう」「生きづらさの解消を社会に注文してみよう」という二つの視点から参加者同士で意見とアイデアを出し合いました。商品としては「自分の体力の残量が電池残量のように表示されるデバイス」、「光の刺激に弱い人のための紙のような質のタブレット」、「全自動人間洗濯機」などの面白いアイデアが飛び交いました。

また「関係性についての当事者研究」には、8名が参加しました。「各々の生きづらさを抱えるふたりが良い関係性を続けていくためにはどうしたらいいのか」というテーマで,質問やアイデアが飛び交いました。気持ちを伝えるハードルを下げるためには,「直接」「言葉で」表現することに限らず,さまざまな手段がありそうだ、と考えさせられるワークでした。

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第3部ではクロージングと自由交流会が行われ、本日の感想の共有が行われました。企画や参加をしてくださった参加者の皆さんに改めてお礼を申し上げます。 (報告:石渡、馬場、中里、山田)