ブログ 2019年04月

2019.04.04 Permalink

2019年1月7日(月)に第2回「障害と共生」研究会が開催された。研究報告を行ったのは、田中慎太郎(UTCP)と山田理絵(UTCP)である。

はじめに、田中が「臨床心理学史から未来の現場を考える」というタイトルで報告を行った。主に英国における統合失調症に対する心理学研究史を取り上げ、「心理現象の数値化」に基づいた心理学が、精神医学の新たな治療法の開発・普及へと繋がった流れを概観した。現行の治療法に対する欠点を、サービスを利用する当事者の視点から評価する近年の動向を踏まえ、「心理現象の数値化」に基づく臨床心理学が、精神医学および当事者の声を重視した研究活動と協働することの可能性を述べた。


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 続いて山田が「『難病』研究の歴史からみる拒食症」というタイトルで報告を行った。主に1970年代から1980年代初頭までの厚生省の「難病」施策の動向を取り上げ、いかにして「拒食症」が難病として国家的な研究プロジェクトの研究対象となったのかについて概観した。その上で、生物医学的な眼差しが日本の拒食症研究に与えたインパクトについて論じた。


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(報告:田中、山田)

2019.04.04 Permalink

2018年9月22日(土)に、「障がい∩社会的養護」というタイトルで、シンポジウムと写真展が開催された。本イベントの構想は、フォスター(江連麻紀・白井千晶・齋藤麻紀子)によって企画され、フォスターとUTCP上廣共生哲学寄付研究部門「障害と共生」プロジェクトとの共催によって開催される運びとなった。

 白井千晶氏(静岡大学・社会学者)によれば、「フォスター」とは「血縁、法律的な関係によらない子育て」を意味し、フォスターケアという言葉は、日本語では社会的養護と訳されるという。社会的養護とは、「保護者のいない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護すること」であると、厚生労働省によって定義されているという。
今回のイベントでは、障害と社会的養護の重なりに焦点が当てられた。本イベントが企画された背景には、「精神保健と子育て支援や児童福祉はとても重なっているのに、あまり取り上げてこられなかったのではないか」(本イベントポスターより引用)という問題意識がある。イベントでは、里親として子どもを預かった経験のある方、里親に子どもを預けた経験のある方、ファミリーホーム、研究者、医師、家族のあり方を写し続けてきた写真家など、様々な立場の方々からご講演をいただいた。また、当日は、写真家の江連氏が撮影した写真の展示も並行して開催された。講演会、写真展とともに大変盛況のうちに終了した。(報告:山田)


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2019.04.03 Permalink

2019年3月17日(日)、こまば当事者カレッジ2018年冬期コース「生きづらさを考える」の第3回が開催されました。今回は講師に日本大学の中村英代先生をお招きし「コントロールを手放す 変えられないものを変えようとし続ける私たち」と題し、社会学の観点から「生きづらさ」「依存」についてレクチャーしていただきました。

「生きづらさ」について、社会学を利用して客観的に理解し、それだけに留まらず「生活の中で毎日実践できる社会学=臨床社会学を目指す」、すなわち「生きづらさ」として現れている「問題」を外在化して対処できる技術を身につけることが目標です。


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 今回のキーワードである「コントロール」と「依存」についてのレクチャーでは、先生のご経験談も交えて、依存症になるきっかけは「たまたま=偶有性」であるとお話くださいました。そして「依存=止まらない」背景にある強迫観念と渇望についての説明に加え、苦しさを生む「コントロール」のメカニズムの説明があり、ご参加のみなさまが深く頷かれている様子でした。
レクチャーの後は、ご参加のみなさまに①「自分が困っている問題」②「私の生きづらさ」のどちらかについて付箋に書き出していただき、内容に沿って5つのグループに分かれてワークをしました。自分一人では「問題」を外在化して「対処」することが難しかったことも、ワークを通して参加者と話す中で、対処方法を編み出される方もたくさんいらっしゃいました。1時間のワークの時間はあっという間で、まさにレクチャーの中で中村先生が話されていた「共感の難しさ」と「安心して語れる場」の両方を体験された方も多かったかも知れません。
 最後に感じたことや意見を全体で共有し、あっというまに終了となりました。
 今回のレクチャーとワークを体験しなければ生まれなかったであろう意見もたくさんあり、このようにみんなが考えて意見を言える場所が必要だと、改めて感じる機会となりました。


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 最後になりましたが、さまざまな立場の当事者としてご意見・ご質問を発信してくださったご参加者の皆さま、本当に有難うございました。今後も、こまば当事者カレッジもどうぞよろしくお願いいたします。

(文責:澤田宇多子)