2019年5月23日(火)に第3回「障害と共生」研究会が開催された。研究報告を行ったのは、石渡崇文と井之上祥子(UTCP)である。
はじめに、石渡が「ジョルジュカンギレムと医学の科学性」というタイトルで報告を行った。医学は一人ひとり異なる患者を相手にする以上、本質的に「個」にかかわる分野である。科学を「一般的なものについての知」と捉えるのであれば、医学は本当に科学と言えるのだろうか。発表では科学と生命との関係から医学の科学性を考えようとしたカンギレムの医学思想を紹介した。ディスカッションでは外科と内科を区別する必要性や、カンギレムの科学性概念が臨床家にとってどういう意味を持ちうるのかといった問いが出された。「医学の科学性」という一見して捉えどころのないテーマを扱ったが、結果的にはそのおかげで異なる分野同士に共通する関心を引きだすことができたのではないかと思う。
続いて井之上が「臨床心理学と科学の関係について」というタイトルで報告を行った。発表では臨床心理学の中で“科学”という言葉がどのような文脈で用いられてきたかを振り返り、捉えなおすことで臨床心理学の研究や実践を説明しうる新たな枠組みについて検討することを目的とした。
ディスカッションでは『個』を扱う臨床心理学がこれまで科学的な保証をどのように担保してきたか、また今後どのように展開されていくのかについて議論がなされた。またその中で、心理療法における「見立て」について定義することや標準化することの難しさや「見立て」を修正するということがどのような意味を持つのかについて様々な意見がでた。今回、専門分野の垣根を越えてひとつのテーマで発表を行うことは自身の理解の枠組みを拡げる機会を与えてくれたように思う。
(報告:石渡、井之上)