イメージ研究の再構築 / Reconstruction of Image Studies

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イメージとは何か? 人間が創り出した造形物や視覚表象をめぐる、古くて新しいこの問いに対しては、その答え方は無数にあるだろう。従来、「美術作品」という言葉で括られてきたイメージ群に加え、近代以降に誕生した写真や映像など新しいイメージ群も日々増加しつつある現在、我々はイメージのはらむ多様な問題を人間学的、文明論的な視野で再考せざるを得ない地点にさしかかっている。「イメージ研究の再構築」と名づけたこのプログラムが、「共生のための哲学」の一分枝として組み込まれるゆえんである。

言うまでもなく、イメージ研究の伝統的な方法としては「美術史学」が存在する。本プログラムはそこに甘んじるのではなく、それを無視するのでもない、両義的な態度をとりたい。すなわち、旧来の美術史学を脱構築し、新しいイメージ研究の方法として組み替えていくこと。既存の学問の利点を消すことなく、未知の「研究場」を設営していくこと。その手がかりとして、絵画を中核とするイメージ群を、「メタ・イメージ」、「パレルゴン」、「ジェネティック」、「イメージとエクリチュール」という4つの視点から新たに捉え直してみたい。第1に、鏡や画中画、自画像や芸術家像などメタ・レベルのイメージの機能、第2に、署名や額縁、細部の意味などイメージにおける付随的な要素の役割、第3に、生成から受容までのプロセスを包含するイメージの多義性や潜在性、そして第4に、絵の中の文字や美術批評などイメージ(画像)とエクリチュール(文字)の多彩な相関関係、以上である。

関心を共有する国内外の研究者と密接に連携しながら、正統的な美術史学に拘束されてきたイメージ群を異なる角度から照射し、その意味と機能を解明することを、本プログラムの大きな目標とする。研究と教育がつながり、創造的な議論が連鎖的に発生する、そのような場でありたい。

お問い合わせ:image.studies[at]utcp.c.u-tokyo.ac.jp
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