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Title:

文学者と近代の超克(2)——保田與重郎

終了しました
Date:
2012年1月20日(金)17:00-19:00
Place:
東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム2

「文学者と近代の超克」ワークショップでは、1930年代の日本における近代再考の言説を再検討する。この時期は、世界大戦や経済不況により西洋中心的な近代の限界が露呈する一方で、植民地における独立運動が活発化し、アジアにも目を向けざるを得ない時代であった。それは近代的な国民国家の秩序を問い直し、台頭するアジアとどう向き合うかという問題を投げかける。もちろん、そのなかには日本中心的な思想に陥り、「近代の超克」のような袋小路に入ってしまったものも少なくないが、同時にそのような枠組みに収まりきらないテクストが見られるのも事実である。本ワークショップでは、そのようなテクストの可能性を問題にすることで、当時の近代再考の言説を再検討し、今日の東アジアの問題を考えるうえでの一つの参照点としたい。第二回は、保田與重郎を取り上げる。

講演者:
林少陽(香港城市大学)
小松原孝文(東京大学大学院博士課程/UTCP)

司会:
齋藤希史(東京大学/UTCP)

〈発表要旨〉
1. 美とナショナル・ヒストリ——岡倉天心と保田與重郎の間に(林少陽)
 本発表は岡倉天心(1862-1913)の『日本美術史』(明治23年―25年までの講義)『東洋の理想』(明治36年)などの書物と、保田與重郎(1910-1981)との間の関連・違いを探りたい。特に保田與重郎の『日本の美術史』(1967)に焦点を置きたい。歴史叙述としての岡倉・保田の書物はナショナル・アイデンティティを確立する過程においてどのように他者のイメージを構築し、そして「美」がどのように機能したかのかを分析してみたい。そこに二人の「近代」に対する態度を一つの系譜として見たい。

2. 近代の論理と「日本の橋」(小松原孝文)
 保田與重郎は、近代の「超克」ではなく「終焉」を説く。それは西洋中心的な近代に対する問いかけである。そのことを保田の代表的なテクストである「日本の橋」から検討してみたい。評論とも随想ともつかない、独特の表現によって書かれたこのテクストは、しばしば日本とローマの橋の文化的な比較を行うものとして読まれてきた。あるいは、そこから敷衍して、このテクストが日本と西洋の対比を前提として成立していると考える議論は少なくない。しかし、このような比較や対比の構造がそもそも破綻しているところに、このテクストの意義はあるように思われる。それは一見すると論理を無視した議論のようにもみえるが、ここでは明らかに西洋中心的な近代を問題にしている。本発表ではそのような視点から、保田與重郎「日本の橋」を読み直してみたい。

使用言語:日本語
入場無料・事前登録不要
主催:東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)
「近代東アジアのエクリチュールと思考」プログラム


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