Title: | 【関連イベント】G.ビースタのP4C批判とその行方――哲学プラクティスの現在への一視角 |
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Date: | 2023 年 7 月 27 日(木)14:00-17:00 |
Place: | 明治大学和泉キャンパス リエゾン棟一階 L1 教室 |
研究集会「G.ビースタの P4C 批判とその行方――哲学プラクティスの現在への一視角」
日時:2023 年 7 月 27 日(木)14:00-17:00
場所:明治大学和泉キャンパス リエゾン棟一階 L1 教室
アクセスマップ https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/izumi/access.html
キャンパスマップ https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/izumi/campus.html
*参加自由・無料
主催:科研(基盤 B) 哲学プラクティスと当事者研究の融合:マイノリティ当事者のための対話と支援の考察(代表:神戸大学 稲原美苗)
14:00-14:15 趣旨説明 池田喬(明治大学)
14:15-14:35 報告 1:堀越耀介氏(東京大学UTCP/日本学術振興会)
「子どもとする哲学(P4C)における主体性の問題をめぐって―G. ビースタがつきつけたこと」
14:35-14:45 質疑応答
14:45-15:05 報告 2:土屋陽介氏(開智国際大学)
「ビースタの P4C 批判にどのように応答するか?―主体化の教育のための道具としてのP4C―」
15:05-15:15 質疑応答
15:15-15:30 休憩
15:30-15:50 報告 3:後藤美乃理氏(東京大学)
「探究の共同体における教師の位置―A. M.シャープへの着目―」
15:50-16:00 質疑応答
16:00-17:00 話し合い
【趣旨】
当初ごく一部の学校で試験的に行われていた「子どものための哲学(P4C)」あるいはその
中身である「哲学対話」は、今では、教育現場に広く知られるようになり、また、実践され
るようになった。特に、2017 年の改訂学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」が掲
げられ、道徳や公民の教科書で哲学対話が取り上げられるようになったことなどが大きい。
しかし、P4C や哲学対話が学校制度に深く組み込まれることには、哲学を教育のために利用
すること、つまり哲学の道具化が含まれる。
この点から P4C を用いた教育実践を痛烈に批判したのがオランダの G. ビースタであっ
た。哲学の道具化は、哲学を、現代に必要とされる能力やスキルをもった人間主体を作り出す
道具にし、人間とは何かを哲学的に自由に問うことを封じてしまう。ビースタは、批判的
思考や自律性の育成といった特定の目的の手段としての P4C を批判する一方、E. レヴィナ
スなどを参照しながら、他者への応答責任の引き受けとしての「主体化」などによって P4C
に新たな意味を与えようとしていた。
批判的思考や自律性に価値を置く P4C 論にはもちろん、P4C の創始者 M. リップマンらの
それが当てはまる。日本においてもリップマン由来の米国における P4C がモデルとなり、
ハワイの T. ジャクソンの実践が影響力をもつというかたちで、P4C が広まってきた。対し
て、ビースタの批判はレヴィナスなどヨーロッパの知的伝統を背景としている。日本でもビ
ースタの翻訳書が次々に刊行されてきたが、それとともにヨーロッパの P4C 論にも目が向
いてきたと言ってよいだろう。例えば、今年三月に、デンマークから哲学プラクティスの実
践家である F. ハンセンが来日したが、彼は、ビースタの「主体化」をも哲学の道具化から
無縁でははないとし、驚きの経験を重視した現象学的な哲学対話を提案している。
ビースタの P4C 批判は、P4C が教育現場に普及してきた今、日本でも真剣に受け取られつ
つある(ビースタの著作にはすでに六冊の翻訳がある)。さらには、ビースタの P4C 批判に
応答し、その後の行方を模索する動きも出てきている。その動きのなかには、ビースタの
P4C 批判は一面的に過ぎるのではないか、例えば、リップマンとともに「子どものための哲
学推進研究所」(IAPC)を設立したアン・マーガレット・シャープの思想や、ジャクソンら
によるハワイでの(小文字の)p4c に含まれる発想などを今一度きちんと理解する必要があ
るのではないか、といった問題意識も含まれる。
この研究会では、ビースタの P4C 批判を受け止め、日本における P4C の行方を考えてき
た三人のスピーカーに、この批判の意義と限界は何か、この批判の後にどういう P4C を実
践していくのか、などについて語っていただく。