Events / イベント

« 前へ | 次へ »
Title:

シリーズ〈思考のレトリック〉第1回:井出健太郎「抵抗のリリシズム――吉本隆明のロマンティシズム批判」

終了しました
Date:
2013年2月8日(金) 16:30-18:00
Place:
東京大学駒場キャンパス101号館2階研修室

シリーズ〈思考のレトリック〉第1回

発表者:井出健太郎 (東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
発表タイトル:抵抗のリリシズム――吉本隆明のロマンティシズム批判

司会:星野 太(UTCP)

〈要旨〉
 本発表は、吉本隆明の詩的出発たる『固有時との対話』(1952)から『転位のための十篇』(1953)への道程を、日本におけるロマン主義的な精神に対する内在的な批判の営みとして再読しようとするものである。

 自ら「内的体験」としての戦争を内側から対象化することで詩作/批評を開始した吉本だが、彼自身が認めるように、その戦争体験は当時の青年をとらえた小林秀雄や日本ロマン派の言葉が拓いた言説空間のなかで成立したものであった。トータルな戦争の問いなおしは、彼らからの世代的な影響を検討することをも意味していたのである。それゆえ、戦後数年にわたるその作業が詩作のかたちをとった『固有時との対話』『転位のための十篇』も、残存するロマン主義への批判的な応答として読むことができると考えられる。これらの詩は、一方は一人称による独白、他方は二人称に対する対決的な言語行為という一見対照的な形式をとってはいるが、しかし自意識の追及から歴史的な現実へ反転する詩的言語にはむしろ一貫した「ダイアレクティックな発展」(鮎川)が確かに見出される。そして、それこそ、あらゆる批判を美化された風景に回収するロマンティシズムへの抵抗を刻んでいるのではないだろうか。

 以上の見通しにしたがって、本発表ではまず上記の二詩篇を以下の二つの観点から読み解く。第一に、「風景」への抵抗。すなわち「事物の増殖作用」(ド・マン)を特徴とするロマン的精神の批判がいかにイメージの次元で遂行されたのか検討する。第二に、再帰的な「反省」の批判。アイロニカルな「反省」はロマン主義を特徴づける思考様式のひとつだが、吉本がそれに従いながらいかに距離をとろうとしたかが論じられるだろう。これらの作業の後、「荒地」の詩人との対比を踏まえ、こうした批判の有する政治的な意義を、戦争体験との関わりにおいて明らかにすることが発表の最終的な帰着点となる。

〈参考文献〉
・『吉本隆明全著作集1』(勁草書房、1968年)
・ポール・ド・マン『ロマン主義のレトリック』(法政大学出版局、1998年)

SERIES_1_IDE_poster.jpg

ポスターをダウンロード

使用言語:日本語|入場無料|事前登録不要


« 前へ  |  次へ »
  • HOME>
    • Events>
      • シリーズ〈思考のレトリック〉第1回:井出健太郎「抵抗のリリシズム――吉本隆明のロマンティシズム批判」
↑ページの先頭へ