Title: | 「共生のための障害の哲学」第6回研究会「アトピー性皮膚炎、イスラームにおける障害概念、手話言語学」終了しました |
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Date: | 2012年9月26日(水)14:00-17:30 |
Place: | 東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1【会場が変更になりました】 |
「共生のための障害の哲学」 第6回研究会
「アトピー性皮膚炎、イスラームにおける障害概念、手話言語学」
【会場がコラボレーションルーム3からコラボレーションルーム1へと変更になりました。ご注意ください】
講演
牛山 美穂氏(早稲田大学 人間総合研究センター 招聘研究員)
「アトピー性皮膚炎患者の抱える問題―病気と障害のはざまで―」
【要旨】
アトピー性皮膚炎というと、「子どものかかる皮膚の痒くなる病気」というイメージが一般的だろう。しかし、実際には、子どもだけでなく、成人にも多くの患者がおり、一般的に知られているイメージよりもずっと深刻な症状を抱えている人もいる。本発表では、こうした重症の成人アトピー性皮膚炎患者が抱える社会的な問題について議論したい。
問題点の第1は、重症のアトピー性皮膚炎患者の場合、身体を動かす、睡眠をとるといったごく日常的なことすらできなくなるほど症状が酷くなり、社会的生活からのドロップアウトするほど生活に困難をきたす場合があるが、「アトピー性皮膚炎なんて大した病気ではない」という世間の認識があるため、周囲の理解が得られないという点である。
第2に、医療に関わる問題がある。現行のアトピー性皮膚炎治療ガイドラインでは、ステロイド外用薬を用いて症状をコントロールすることが治療の柱になっている。しかし、ステロイド外用薬が効かなくなっていき、しかも使用を中止すると激しい症状の悪化が起こるという問題点が黙殺され、実際にこうした問題を抱える患者が、医療から見捨てられる状態が続いている。
第3に、患者のコミュニケーション困難の問題がある。発表者の行った患者へのインタビューでは、いじめや疎外の経験がしばしば聞かれた。こうした問題は、症状が目に見えること、絶えず体を掻かなければならないことといった、アトピー性皮膚炎特有の症状に起因しているとも考えられる。
本発表では、こうした患者の直面する問題を掘り下げることにより、いかに彼/彼女らが社会のなかで生きやすい状況が作っていけるかを考察したい。
講演
小村 優太氏(日本学術振興会 特別研究員 PD 東京大学)
「イスラームにおける障害の表現」
【要旨】
イスラームという宗教の根幹となる『コーラン』が世に現れてから1400年近くの時が流れてきた。その間、イスラーム世界では無数の人間の営みが繰り広げられてきた。本講演ではこういったイスラーム世界における人々の表現手段における、障害概念の取り扱いの変遷をたどっていきたいと思う。そもそもイスラームの聖典『コーラン』にも障害にかんする表現は含まれており、ムハンマドの言行録である『ハディース』、またはそれらを基に作られたイスラーム法においても障害、障害者にかんする表現は見受けられる。さらには文学作品『千夜一夜物語』などにも障害は物語の一つの要素として登場しており、こういったイスラームにおける障害の言語表現を概観することによって、時代、文化、宗教すべてが現代の日本人と大きく隔たった人々の持つ障害概念を少しでも明らかにすることが出来るのではないだろうか。
特別講演
森 壮也氏(日本貿易振興機構アジア経済研究所 (JETRO-IDE) 主任研究員、元日本手話学会会長)
「手話の言語学:手話を言語学のツールで分析するということの意味と意義」
【要旨】
手話についての関心は,近年,日本でもようやく高まりつつある。震災後の政府記者会見に手話通訳が付くようになったことから,より多くの市民が福祉以外のオフィシャルな場で手話を見る機会が増えてきた。このことは,手話利用者の人権への理解にもつながっている。これと相まって,言語としての手話への社会的関心も高まってきている。そもそも,言語としての手話というのは,どういう意味なのだろうか,また手話を言語学的に分析するということは,実際にどういうことをするのだろうか。ジェスチャーと手話とはどのように異なるのだろうか。世界各国の手話はどのように異なっているのだろうか。こうした問いに手話言語学がどのように答えてきたのか,また音声言語を分析するために発達してきた「(音声)言語学」が括弧や暗黙の内に仮定されていた「音声の」という修飾語句のつかない真の言語学になっていくためには,何が必要なのか,手話言語学では,これまでどういったアプローチがとられてきたのかを概説する。
使用言語:日本語(手話通訳あり;ただし、少人数を対象として対面式で行う予定です。手話通訳を希望される方は恐縮ですが、下記連絡先までご一報ください)
入場無料|事前登録不要
連絡先:cishi08 //at// mail.ecc.u-tokyo.ac.jp (石原孝二) (//at//のところを@に変えてください。)
UTCP上廣共生哲学寄付研究部門「共生のための障害の哲学」(L2)プロジェクト