Title: | 【関連イベント】日本思想研究会「「決断」の光景とその忘却――丸山眞男における「政治」と「歴史」の交錯」終了しました |
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Date: | 2009年11月24日(火)15.00-17.00 |
Place: | 東京大学駒場キャンパス101号館2階 研修室 [地図] |
発表者:井出健太郎(東京大学修士課程) 司会:西山雄二(UTCP)
本発表の主眼は、政治思想史家・丸山眞男(1914-1996)の著述を精査することを通じて、戦中の政治的思考をネガ像にして呈示された「政治」のあり方と、とりわけ1960年初頭以降、自然主義を全的に切断することを目指して案出された歴史叙述とが、いかに切り結ぶのかを検討することにある。
丸山は、戦中の「政治」への批判的検討を通じ、「良心」にもとづく「決断」を軸に据えて、政治権力の根拠を批判的に問う思考を呈示するとともに、こうした「決断」を可能にする、一定の原理を定着させる必要性を説き続けた。だが、冷戦へ接続された戦後の「政治」を眼前に、また「日本の思想」(1957)の執筆を経て、出来事を自然化する傾向性、すなわち本居宣長=小林秀雄に代表される「自然主義」を自らの「敵」と定め、それを内側から断ち切る歴史叙述を構想することになる。その叙述は、(1)「開国」または「外患」における、「外」由来の原理との接触の契機(2)十全に実現されなかった過去を「型」として叩き出し「追体験」する方法の二点を主軸として構築され、「忠誠と反逆」(1960年)や『正統と異端』の構想へと結実した。
ここでは、こうした「政治」と「歴史」の交錯点を詳細に検討し、丸山が思い描いた政治-歴史のあり方が排することになった論点を浮き彫りにしたうえで、彼の著述の総体を批判的に論じる視座を得たいと思う。それは、超越的な原理と対峙する「強烈な主体」を相対化し、法と暴力の結びつきを引き受け、合法性において権力の根拠を問う別の政治主体のあり方を強調することになるだろう。
〈参考文献〉
丸山眞男「歴史意識の古層」(1972年)『忠誠と反逆』(ちくま学芸文庫)
入場無料、事前登録不要
日本思想研究会について
本研究会は、西山雄二(UTCP)、岩崎正太(同)、星野太(東京大学博士課程)、井出健太郎(東京大学修士課程)によって運営される。近代日本の思想家とその基本テクストを毎回取り上げ、その丹念な読解と批判的な注釈を目的とする。運営者には近代日本思想のいわゆる専門家は含まれておらず、それゆえ、研究会はいくぶん入門的な内容をも含むものであり、関心のある方は誰でもその都度参加自由である。月1回のペースで実施される会では、今後、丸山真男、大杉栄、三木清、戸坂潤が取り上げられる予定である。