UTCPコンセプト
本センター「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP:University of Tokyo Center for Philosophy)は、政府による研究拠点形成プロジェクトである21世紀COE(2002~2006年)、グローバルCOE(2007~2011年)と2期、あわせて10年にわたって東京大学駒場キャンパスで「共生」をテーマに哲学の研究・教育を行ってきました。それは、チームを作って組織的に活動し、国内外の研究者や機関と連携し、たえず新たなテーマ、問題に取り組むという、まったく新しいスタイルの哲学を生み出しました。そして2012年、財団法人上廣倫理財団の支援を得て、「上廣共生哲学寄附研究部門」を創設しました。本センターは引き続き、「共生」という根本理念のもと、人類の未来を切り開く哲学的な思考を探求し、学際的・国際的な研究・教育をさらに推進し、また実社会との協同により実践的な活動へと展開していきます。
*研究部門、および他の研究プロジェクトの詳細については(リンク先)をご覧ください。
寄附部門
CPAG
UTCP活動紹介
〈研究部門〉
UTCPは基本的な教育研究単位として領域横断的な6つの部門を設けます。各部門は100名以上の国内事業推進協力者と共同で活動するだけでなく、約100名ほどの海外事業推進協力者とも連携し、世界各地域の大学や研究組織と提携を結びます。
1 : 技術・情報・脳
技術史や情報科学、脳科学など自然科学研究の最新の成果をもとに、自然と人間の関係の再編を哲学的に考察することで、現代社会の新たな倫理を提起します。
2 : 芸術・表象・身体
美術・演劇・文学・映画などの諸芸術から精神分析に至るまで表象文化全般の包括的な理論を探究することで、人間の感性と身体の限界と可能性を批判的に考察します。
3 : アジア・近代・対話
西洋と東アジアの哲学的対話を通じて、近代性の問いを歴史認識や女性性の問題と関係づけながら考察することで、現代哲学を東アジアにおいて共同構築します。
4 : 日本文化と東アジア伝統思想
仏教、儒教、道教など東アジアの諸思想の比較・検討から既存の西洋モデルの人間学をアクチュアルに掘り下げ、人間存在の新たな価値観を世界へと発信します。
5 : 宗教と世俗化
現代世界における世俗化と世俗主義の問題を歴史的に検討し、宗教と世俗主義の関係の比較社会論的考察から、グローバル化時代における「宗教の復興」を問い直します。
6 : 近代批判と古典文化
古典的テクストをめぐる比較文明論的考察を通じて、西欧に根をもつ「近代」概念を歴史的に解剖しつつ、その特質と限界を解明します。
各研究部門は個別に、あるいは共同で、海外研究者とともに短期間の「講演会」「ワークショップ」を実施します。また、中期間の「国際連続セミナー」では、海外研究者が一定期間、日本に滞在して、UTCPでの共同作業から新たな思想を紡ぎ出し、世界に発信するように条件を整えます。UTCPはこれまで、北米・西欧・東アジア地域で日本発信型の国際シンポジウムを開催してきました。今後は、トルコ、アルゼンチン、イスラエルなどの新たな地域で、21世紀的な人間学を積極的に発信する国際シンポジウムを開催する予定です。
〈教育部門〉
UTCPは異なる世代の研究者間の学術的対話・交流を促進するために、3種類の教育プログラムを実施します。教育プログラムは、領域横断的な知性や総合的な分析能力を有し、かつ、複数の言語の運用能力を備えた若手研究者を育成することを目的とします。教育プログラムは東京大学の既存の研究組織の枠内だけで実施されるのではなく、国内外の研究拠点や研究者と有機的に連携しつつ多軸的に実施される点が特徴的です。大学院博士課程に所属する研究員に対しては、それぞれのプログラムで総合文化研究科での単位が認定されるように制度を整えます。
(1)短期教育プログラム
若手研究者は自らの関心に沿って、自らのイニシアティヴによって1年間の短期教育プログラムを作成し、プログラム・マネージャーとコース所属教員の助言のもと実施します。提携大学・機関の若手研究者との間でワークショップも実施されます。
(2)中期教育プログラム
事業推進担当者のリーダーシップのもと、海外の提携拠点と国際的に共同して2年単位で毎年4~6本のプログラムが実施されます。セミナーとシンポジウムから構成され、セミナーにおいては教員が相互に提携大学・機関に赴き講義等を行い、その成果を踏まえて合同のシンポジウムを適宜開催します。例えば、北米、アジア、ヨーロッパといった各拠点で、事業推進担当者が若手研究者を2~3名を引率して合同セミナーを実施します。若手研究者はいずれかの部門の中期教育プログラムに所属します。
(3)先端教育プログラム
1 : 技術論、芸術論
2 : 東アジア思想、日本思想
3 : 古典文化論、イスラーム論
グローバル化時代における「共生」思想を歴史を遡って深く探求するためのセミナー。UTCP事業推進担当者および外部の研究者によってオムニバス形式で実施されます。聴講は他大学の学生や一般市民にも開かれたものとし、ある程度の参加者数が許容されます。講義形式で実施され、必要に応じて参加者の発表や討論がおこなわれます。
4 : 英語による口頭発表、論文執筆の支援。
教育研究成果の海外への情報発信のための主要な手段である英語の能力を洗練させるためのセミナー。英語のネイティヴ・スピーカーによって少人数で実施されます。