破急風光帖

 

★  日日行行(212)

2019.02.01

* 昨夜は、池袋ジュンク堂で『日本を解き放つ』をめぐって中島さんとのトーク。多くの方が来てくださって満員だったかな。誕生日も近いので、大輪のダリアをもって来てくださった女性も、おいしいお菓子を差し入れてくださった男性もおり、UTCP関係では西山雄二さん、ニュージーランドからいらしたデンニッツア・ガブラコヴァさんの姿もあって、なつかしく、たのしい夜でした。外はみぞれまじりの氷雨でしたが、「こころ」は明るく。

 ありがたいことですね。しかも中島さんとのトークも、思いがけない着地点となって、おもしろかったです。多くの人があとで、われわれふたりの「知的な友情」に感動した、と言っていたのが印象的でした。やはりUTCP十数年の「つきあい」というのはただならぬことですね。その「つきあい」に今回、一冊の本という果実が実ったことはまこと喜ばしいこと。

 デンニッツアさんとはその前日、恵比寿の不思議な食堂で再会してお食事をしました。彼女は、法政大学の国際日本研究の賞を受けに来日とか。UTCPからほんとうに多くのすぐれた研究者が巣立っていったことが嬉しいです。わたしはなにかを教えたわけではなく、ただひとつの場を全力でキープしつづけただけなのですが。大学という組織のなかで、創造的な活性化をたやすことなく、ひとつの場を維持することがどれほど困難か、そしてまたどれほど刺激的で喜びに満ちたものであるか、それだけは、わたしはほかの誰よりもよく識っていると思います。
 
 一昨日は、もうひとつ。これはまったく個人的な自分への「ごほうび」みたいなことですが、ひとりで新国立劇場にオペラ「タンホイザー」を観に行きました。よかったです。すばらしい出来。かつて96年くらいだったか、バイロイト祝祭歌劇場に「リング」4作を観に行ったときに、思いがけず「タンホイザー」も観ることができて、あの深いふかいオーケストラ・ピットから最初の音が湧き上がってきたときの感動を思い出しながら、観ていました。タンホイザーもよかったですが、エリザベートの歌がよかったですね、演出も美しかった。バレエも合唱も、いい出来でした。
 わたしは「うたびと」でも「騎士」でもないが、しかしまぎれもなくある種の(知の)「吟遊詩人」ではあある。タンホイザーの運命は他人事ではありません。いろいろな物思いにふけりながら、観ていました。陶酔と思索、感傷と希望、あのストーリーをディコンストラクションしながら観ていました。

 で、今夜は、これから安藤朋子さん独演のARICAの舞台を観に北千住へ。
 舞台はいいな。劇的なものがわたしを呼びますね。1月が終って、いよいよほんとうの新年の幕開け(わたしは旧暦主義なので)。2月はフランスに行くことにしています。「吟遊詩人」にどんなドラマがまっているのか。杖に若葉がしげるのか。それとも棒として倒れるのか。

 (しかしいっこうにすすまない原稿を中断して、このブログに逃げ込んでいるような有様では、ドラマどころじゃないですね。)
 


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