破急風光帖

 

★ 日日行行 (30)

2016.04.05

 3月31日の奥付で、未来社からわたしの単著『オペラ戦後文化論1ーー肉体の暗き運命1945-1970』が刊行されました。

 これは2012年にパリのコレージュ・ド・フランスで4回にわたって行った講義を出発点にして、翌年から雑誌『未来』誌上で19回の連載を通して書きついだものをまとめたものです。コレージュの講義のときにすでにオペラ仕立てを構想し、それを最終的には5幕15場+アルファで構成したもの。終戦から1970年くらいまでの日本文化における「肉体」というプロブレマティックをおっかけた形になっています。1。火、共同体の問い、2。風、実存の問い、3。黄金、暴力の問い、4。バッカナール、5。フィナーレ・逆立崩壊 という構成です。
  自分が生きた歴史を内側から演じるという、3人称でも1人称でもないフラクタルな語りを通して、大江健三郎、三島由紀夫、安部公房、坂口安吾、吉本隆明、土方巽、寺山修司、唐十郎、田村隆一、吉岡実、などのテクスト断片を取りあげて、それを論じるというよりは、それを演じるという方向で突っ走ったエクリチュールということになるかな。
 自分がそのなかにいた「歴史」に対してなにかひとつ、自分なりの視座を刻んでおきたいということなのかもしれませんが、わたし自身にもなかなかスリリングな試みではありました。「1」と名づけられているとおり、すでに第2オペラが、いま発売中の「未來」誌で開始されています。今度は、1970年から1989年くらいまでを展望したいと思っていますが、さあ、どうなるか。
ワグナーにならって、4部作で「リング」を構成するのが夢ではありますが・・・ともかく、4年がかりの「仕事」が形になってほっとしています。
 (なお、本文は215頁、定価2200円です。)


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