破急風光帖

 

★ 風光三昧 (4)

2015.06.19

★ 先週の日曜日(14日)、花園神社の赤テント・唐組公演を観に行きました。演目は「透明人間」(初演ヴァージョン)で、この日が東京公演の「楽」。『未来』誌上で連載しているオペラ仕立ての戦後文化論でもまさに「68年」を書いたところでもあり、あの燃え上がる「68年新宿」の劇的な空間がそのまま現代の時空のなかに、その根源的な問題意識をたもったまま生き続けていることになにか感謝に似た感情が湧いてきます。

 「楽」日であったせいか、唐十郎さんご自身もいらしていて、芝居がはねたあとは、赤テントでみなさんと懇談の時間。テントの端のほうで友人たちとお喋りをしていたわたしですが、あるときに、ふとご挨拶に行こうとみなさんを誘って、唐さんのそばへ。そうしたら唐さんが立ち上がって、芝居のなかの歌を歌いました。テント内の一同、感動の大拍手。そこでお開きになったので、なんというタイミングであったか、と深く心動かされました。
 貴重なんですね、こういう特別な「刻」というものが。まあ、年をとるということは、そういう時間のかけがえのなさが身に沁みるということなんですね。人間にとっての、文化にとっての「時間」のけっして線形ではない複雑さ、それこそ、人間という場の力なんですけどね。


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