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【報告】アクセル・シュナイダー講演会「中国の保守主義:歴史、ナショナル・アイデンティティと人間の条件」

2008.06.10 中島隆博, └中国儒学, 哲学としての現代中国

5月20日、ライデン大学現代東亜研究所のアクセル・シュナイダー教授をお招きして、「中国の保守主義:歴史、ナショナル・アイデンティティと人間の条件」と題して、発表が行われた。

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この発表は、歴史学者の柳詒徴(1880-1956)を取り上げ、その歴史学理論および彼における歴史と倫理との関係を論じたものである。シュナイダー教授によれば、柳詒徴は多くの面で新しい方法や観念を取り入れた近代的歴史家のように見えたが、とりわけ1925-26年後、その歴史・歴史学に関する理解は次第に「歴史学は倫理を核心とする」という伝統的な歴史学理念に依拠することになっていった。同時代の西洋の歴史家が直面した歴史主義の危機とは異なり、柳詒徴は「倫理はいかに歴史によって相対化されたか」という問いではなく、歴史を通じて中国の伝統的倫理と、およびこれと関連する「徳治」を重んじる社会、そして政治秩序を描き出して、それを肯定するということに関心を寄せたのである。とはいえ、柳詒徴はまた同時に歴史学・社会政治制度を部分的に近代化しようとした。それゆえに、彼の思想は保守的でありながらも、近代的な因素をも内包している、とシュナイダー教授は指摘した。

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講演の後には、活発な議論が繰り広げられ、参加者の理解が深められた。柳詒徴にとって、近代とは何か。彼は近代に対して果敢な批判を行い、伝統的実践に潜む智慧に依拠した一方、近代的要素を持つこともあるのだとすれば、彼の近代理解は両義的だったといえよう。それだからこそ、柳詒徴の説を解明することは近代という曖昧な言葉への理解に資するところがあるといえよう。

(報告:喬志航)

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